久保田智樹「ASHIO 2008/2009」©Tomoki Kubota
東京新宿のAlt_Mediumで久保田智樹「ASHIO 2008/2009」が開催される。
久保田智樹は、自身の故郷である足尾銅山の情景を長年にわたって写真に収めてきた写真家だ。2008年より足尾での撮影を重ね、2022年には初の個展「ASHIO」(IG Photo Gallery / 東京)を開催。本展は、それに続く二度目の個展となる。
写真家・橋口譲二氏は「心は競争ではないのだから、表現は競争ではない」という趣旨のことを語っており、それは久保田の制作活動において大切にしてきたことの一つだ。内なる視点から、久保田は足尾という場所を見つめ、自身の写真のあり方を考えてきた。今回の展示は、初期の作品である2008年と2009年に記録された写真によって構成されている。今後、数年分ごとの作品を順次展示していく予定。
かつて東松照明をはじめとする写真家たちが足尾を訪れ、その光景をカメラに収めた。久保田が自身の故郷を写真の主題として捉え始めたのは、そうした時代の熱気が過ぎ去り、足尾への人々の関心が薄れて久しい頃のことだ。久保田の意識に深く刻まれた情景の一つに、鈴木清の写真集『修羅の圏』(私家版、1994年)に描かれた足尾の姿があった。また、石内都の写真、特に写真集『絶唱、横須賀ストーリー』(写真通信社、1979年)や展覧会「上州の風にのって 1976/2008」(大川美術館 / 群馬、2009年)との出会いは、久保田が自身の故郷を写真で捉える強い動機となった。
足尾は、かつて日本有数の銅山として栄え、鉱毒事件という負の歴史も刻まれた場所だ。 久保田にとって、足尾は自身の原点であり、個人的な時間と記憶が深く重なり合う場所。久保田の作品には、足尾という土地が刻んできた歴史の痕跡と、自身の記憶や時間が静かに写し込まれている。
足尾。煙害で禿げ上がった山々は、子どもの頃から当たり前の風景でした。この小さな町には、深い痛みと重い沈黙が漂っていました。
閉山によって喧騒が消え去り、朽ち果て草木に覆われる社宅や鉱山施設の廃墟。私は十五年以上もの間、ほとんど変わらない足尾の光景を繰り返し撮影してきました。そのわずかな差異の中に、静かに進行する時の流れを感じるからなのですが、いつの間にか足尾の風景に囚われてしまったからなのかもしれません。傷痕を宿すこの風景は、急速な変化と衰退を経て、これから日本が直面するであろう現実を静かに示唆しているようにみえます。
私が見つめてきた足尾の風景を通して、過ぎ去った時間、そしてその先に続く何かを、それぞれの心で感じ取っていただければ幸いです。
久保田智樹
■展覧会情報
久保田智樹「ASHIO 2008/2009」
会期:2025年6月13日(金)~6月18日(水)
時間:12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
休廊日:会期中無休
会場:Alt_Medium
住所:東京都新宿区下落合2-6-3 堀内会館1F
■ZINEの案内
久保田智樹『ASHIO 2008/2009』
発行:襤褸書房(RANRU BOOKS)
判型:A5判
寄稿:金村 修
部数:200部限定
価格:1,500円(ミニプリント付き)
■プロフィール
久保田智樹(くぼた・ともき)
1967年 栃木県足尾町(現・日光市)生まれ
1991年 埼玉大学工学部卒
【関連リンク】
https://altmedium.jp/post/202506kubotatomoki/
出展者 | 久保田智樹 |
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会期 | 2025年6月13日(金)~6月18日(水) |
会場名 | Alt_Medium |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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