23回目を迎える現代美術に特化したアートフェア「ART OSAKA 2025」は、2025年6月6日(金)~8日(日)の3日間、中之島・大阪市中央公会堂(国指定重要文化財)、6月5日(木)~9日(月)の5日間、北加賀屋・クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地 / 近代化産業遺産) の2会場で開催する。
中之島会場では、近代建築の壮麗な空間を象徴する大集会室(ホール)にて、「映像プログラム」を初開催となる。本プログラムは、大きく2つのプログラムから構成されます。1つは、プログラム・キュレーションに梅津元氏(批評家 / キュレーター)を迎え、1960年代から現在までの、実験映像、ビデオアート、美術家による映像など、重要な作品の数々を⼀挙に上映し、⽇本における「映像表現」をさぐる。
期間中、毎日上映される『キカイデミルコトー日本のビデオアートの先駆者たち』(企画・制作:ビデオアートセンター東京 監督:瀧健太郎 2013年 82分)は、出光真子、中谷芙美子、松本俊夫、山口勝弘など、映像表現の先駆者たちへの貴重なインタビューを通じて、日本の映像表現の黎明期をたどるドキュメンタリーです。ビデオアートが日本でどのように誕生したかをわかりやすく構成した本作は、国内外で反響を呼び、大阪では今
回が初の上映となる。
それに加え、実験映画、ビデオアート、美術家による映像など、約25本を上映し、全4プログラムにてご紹介いたします。美術家による映像作品として歴史的に重要な村岡三郎・河口龍夫・植松奎二(共作)《映像の映像-見ること》(1973年)、幻の名作と称される柏原えつとむ《サタワル》(1971年)、今回が初公開となる堀浩哉《READING Session No.3》(1974年)、⼤阪港近くの築港⾚レンガ倉庫で撮影された松井智惠《HEIDI 46 ̶ brick house》(2006年)、国内外の映画祭で多数の賞を受賞している折笠良のアニメーション《みじめな奇蹟》(日本語版)(2023年)、そして、国際的に活躍する牧野貴の《The
Low Storm》(2009年)など、映像表現の多様性と奥深さを堪能できる、見応えあるラインナップとなっている。
もう一つは、1998年に開催された、大阪在住の国際的美術家・森村泰昌プロデュースによる伝説的なアートプロジェクト「テクノテラピー」のドキュメンタリー映像を特別上映する。美術家と展覧会制作、舞台演出、会場運営などの専門家集団、そして多くのボランティアスタッフが結集し、本会場でもある大阪市中央公会堂の全館を活用して創り上げた本プロジェクトは、賛否両論を呼びながらも、当時の大阪の芸術文化のエネルギーを象徴する試みとして、いま改めて注目すべき取り組みと言える。
- ■「ART OSAKA 2025」開催概要
日程:2025年6月5日(木)~6月9日(月)- ・Galleries セクション
- 6月6日(金)15:00〜19:00 ※招待者・プレスのみ
- 6月7日(土)11:00〜19:00
- 6月8日(日)11:00〜17:00
- 出展ギャラリー:44ギャラリー
会場:大阪市中央公会堂 3階(中集会室・小集会室・特別室)
大阪市中央公会堂でのブース形式の会場が「Galleries」セクション。総勢44軒のギャラリーが一堂に会し、ギャラリスト独自の審美眼で選び抜いた作品を展示販売する。大阪を代表する近代建築の壮麗な空間と、いまを生きる現代美術作品との‘響演’を体感できる。
・Expanded セクション- 6月5日(木)~9日(月)11:00〜19:00(初日は13:00から/最終日は17:00まで)
出展作家:19組のアーティスト
会場:クリエイティブセンター大阪(名村造船所大阪工場跡地)- 日本初の試みの大型作品・インスタレーションに特化したExpandedも4年目を迎える。本セクションでは、物理的なサイズの大きさだけでなく、メディアの垣根を越え、アートのイメージから一歩踏み出した作品群が並ぶ。今年は、造船所跡地の広大な敷地の全エリアを使用する。
- ・映像プログラム
- 6月6日~ 8日「〈うつること〉と〈見えること〉̶ 映像表現をさぐる: 60年代から現在へ」
- 6月6日「テクノテラピー スペシャルナイト 森村泰昌+多田正美」
- 6月7日「The Image of Techno Therapy」
・映像プログラム
「〈うつること〉と〈見えること〉̶ 映像表現をさぐる: 60年代から現在へ」
日程:2025年6月6日(金)~ 6月8日(日)
会場:大阪市中央公会堂 1階(大集会室)入場無料
映像の到来を告げる実験映画やビデオアート、現代美術における映像を導く表現の原理的な探索、来たるべき映像表現を希求する、越境し、批評し、再帰する、現代の表現者たち。映像に囲まれた世界において、いま、ここで、光学的な機構と電気的・電⼦的な装置を介した⟨うつること⟩の根源に向き合う。「宿命的に、⟨⾒えること⟩とは何かをテーマにしないとならない」、その声を契機として。「キカイデミルコト」における萩原朔美の発⾔。映像表現の多様性と奥深さを堪能できる、見応えあるラインナップを、全4プログラムご紹介する。
詳細:https://artosaka.jp/2025/jp/screening-program-1/
「テクノテラピー」特別上映会
①6月6日(金)18:30〜
「テクノテラピー スペシャルナイト 森村泰昌+多田正美」(1998年、66分)
テクノテラピー最終日に、3階の中集会室で開催されたふたりの作家によるライブパフォーマンスの収録映像。サウンドアーティストであり、テクノテラピー全体のサウンドデザインにも関わった多田正美を迎え、森村とのパフォーマンスセッションが行われた。
②6月7日(土)18:45〜
「The Image of Techno Therapy」 (1999年、60分)
「The Image of TechnoTherapy」は、本プロジェクトのドキュメンタリーである。来場者が、地下の旧式の昇降機を改造した音響マシンに搭乗して、最上階のメインルームに到着、そこから2階の「こころとからだの部屋」や様々な作品を体験するテクノテラピー内部を巡るツアーを紹介する。上映後は、テクノテラピーのプロデューサーを担当した森村泰昌氏と現代美術キュレーターの金澤韻氏を迎え、石田克哉がモデレーターを務め、当時の制作秘話やアートの現場について話を伺う。当時の芸術家たちが果敢に挑んだ創造的実践を、これからの大阪・日本のアートシーンにどう継承していくか、考える機会になるだろう。上映後はスペシャルトークも開催。
6月7日(土)20:00〜21:00
「上映後スペシャルトーク 」
登壇者:森村泰昌氏(美術家)、金澤韻氏(現代美術キュレーター)
モデレーター:石田克哉氏(MEMディレクター/APCA理事)
会場:大阪市中央公会堂 1階 大集会室
鑑賞料:各回 1,000円 ※オンライン販売のみ
詳細 URL:https://artosaka.jp/2025/jp/screening-program-2/
■プログラム・キュレーション
梅津 元(批評家/キュレーター)
1966年神奈川県生まれ。1991年多摩美術大学大学院美術研究科修了。モダニズム以降の芸術の可能性を探るため、美術、写真、映像、音楽に関わる執筆や企画を中心に領域横断的な活動を展開。
A:「キカイデミルコト―日本のビデオアートの先駆者たちー」
企画・制作:ビデオアートセンター東京 監督:瀧健太郎(2013年、82分)
本作に登場する主な作家:阿部修也、安藤紘平、飯村隆彦、出光真子、かわなかのぶひろ、久保田成子、マイケル・ゴールドバーグ、小林はくどう、中嶋興、中谷芙二子、萩原朔美、松本俊夫、山口勝弘、山本圭吾、和田守弘
B: 映像の到来:実験映画、ビデオアート、現代美術
• 飯村隆彦《くず》 1962年 11分57秒
• 萩原朔美《KIRI》 1972年 9分
• 山崎博《HELIOGRAPHY》 1979年 6分
• 松本正司《CYCLE》1969年 20分19秒
• 柏原えつとむ《サタワル》 1971年 18分
• 野村仁《カメラを手に持ち腕を回す》 1972年 11分
• 中塚裕子+林剛+持田明美 *題名確認中 1983年 14分44秒
• 奧山順市《我が映画旋律》 1980年 7分
• 河合政之《Video Feedback Aleatoric No.1》 2011年 3分11秒
• 瀧健太郎《序 prologue》 2004年 6分29秒
C:表現の探索:美術家による映像
• 村岡三郎・河口龍夫・植松奎二(共作)《映像の映像-見ること》 1973年 12分30秒
• 今井祝雄《円》 1967年 4分3秒
• 福岡道雄《男の美学》 1967-68年 3分24秒
• 堀浩哉《READING Session No.3》 1974年 20分
• 森村泰昌《銃を持つ私/ウォーホルに捧げる》 1998年 2分40秒
• 松井智惠《HEIDI 46 ̶ brick house》 2006年 15分27秒13
• 白井美穂《The Creative Act》 2007年 11分35秒
• 藤本由紀夫《duet》 2021年 6分11秒
D:来たるべき映像表現:越境性、批評性、再帰性
• 折笠良《みじめな奇蹟》(日本語版) 2023年 8分17秒
• 鈴木了二《物質試行 43「CAHIERS|覚書」》 2001年 8分51秒
• 小松浩子《内包浸透現象》 2019年 7分30秒
• 金村修《Topless Beaver Drive》 2019年 11分47秒
• 石原友明《眼投げ。》 2022年 2分36秒
• 高嶋晋一+中川周《No experience necessary #1》2022年 8分1秒(ループ作品)
• 三宅砂織《Seascape(Suzu)2》 2024年 11分(ループ作品)
• 牧野貴《The Low Storm》 2009年 15分
• 葉山嶺《The knot of meridian/子午線の結目》 2015年 11分4秒
<上映スケジュール>
6月6日(金)14:30- Aプログラム、Bプログラム
6月7日(土)10:30- Aプログラム、Cプログラム、Dプログラム、シンポジウム
6月8日(日)10:30- Aプログラム、Bプログラム、Cプログラム、Dプログラム
■映像プログラム関連イベント
シンポジウム「うつる像/見える像-映像表現の在処」
日時:6月7日(土) 15:20~18:00
会場:大阪市中央公会堂 1階 大集会室
予約不要・参加無料 ※一部日英逐次通訳付き
今回のシンポジウムでは、まず、第1部で、1960年代以降の日本における映像表現と美術の関係をさぐり、同時に、映像表現をめぐる時代背景や文化的状況についても議論する。続く第2部では、映像に造詣の深いアジア圏のキュレーターを交え、M+でのAsian Avant-Garde Film Circulation Libraryの紹介や、国際的な視点から日本の映像表現の魅力や特質について議論しその可能性をさぐる。
1部:15:20〜16:30|1960年代以降の日本における映像表現と美術の関係を探る
モデレーター:梅津 元(批評家/キュレーター)
パネラー:植松奎二(彫刻家)、坂上しのぶ(美術史家)、田坂博子(東京都写真美術館学芸員)
2部:16:40〜18:00|国際的視点で日本の映像表現の特質と可能性を探る
モデレーター:田坂博子(東京都写真美術館学芸員)
パネラー:牧野 貴(映像作家)、坂上しのぶ(美術史家)、梅津 元(批評家/キュレーター)、ユランダ・ブレア(M+ キュレーター)、孫松榮(台北芸術大学教授、映像学博士)
- ■チケット情報
ART OSAKAオンラインチケット(2会場入場可能)
3,500円(税込)/当日券4,000円
※小学生以下は無料。但し保護者同伴が必要。
Expandedオンラインチケット
1,500円(税込)/当日券2,000円
※大学生以下は無料。但し学生証の提示が必要。
テクノテラピー鑑賞チケット(オンライン販売のみ)
1,000円(税込)- ※上限数に達し次第販売終了 ※当日券の窓口での販売はない。
- ※未就学児以下は、保護者の膝の上に座る場合において無料。
- ※「〈うつること〉と〈見えること〉― 映像表現をさぐる:60年代から現在へ」は入場無料。
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