河田美奈枝『TREMOLO』がりぼん舎より刊行された。
私が生まれ育った各務原市には、現存する日本最古の飛行場がある。2020年の冬、年老いた父に戦争の思い出をたずねると、「この家の下には30メートルくらいの大きな穴があった」と語った。思いがけない言葉が、私を遠い昔の戦争へと導いた。
各務原の中心部には、かつて各務野と呼ばれた台地が広がっている。手つかずの原野は砲兵演習場や飛行場となり、人々の集う町が形成された。太平洋戦争末期の1945年、この町に大型爆弾が投下され、戦後は米軍が進駐した。現在、台地には航空自衛隊岐阜基地や工場、住宅、木々豊かな公園が立ち並び、往事の面影はほとんど残っていない。(あとがきより)
作者の故郷にて、今を見つめながらその背景にある戦争の記憶を辿る。静謐で秀逸な作品集となっている。
■プロフィール
河田美奈枝(かわだ・みなえ)
岐阜県出身。写真を撮り続ける中で時折感じた渇き。その感情に向かい合い浄化できた時から、内面や意識の表現に惹かれ始めた。すべてのものに永遠はない。消失を意識すると、日常が美しく輝き出し愛おしい存在に変わる。私は色彩と闇、空想とリアル、感情などの対比による美を作品に織り交ぜて、生命の輝きを美しく繊細に表現する。
受賞
2015 「第55回富士フィルムフォトコンテスト」フォトブック部門 優秀賞
2018 「The Editors’ Photo Award ZOOMS JAPAN 2019」 ノミネート
2018 「IPA2018 - International Photography Awards 2018」 プロフェッショナル部門 ファインアート Honorable mention
2019 「御苗場2019」「写真の町」東川町賞
2019 「12th International Color Awards」 プロフェッショナル部門アブストラクト ノミネート
2019 「東川町国際写真フェスティバル インディペンデンス展」レビュアー選出「菅沼比呂志氏」
2019 「Premier Art Award Exhibition London 2019」審査員賞 (Grey Chow氏)
2020 「13th International Color Awards」プロフェッショナル部門 アブストラクト ノミネート
2020 「御苗場 vol. 26 」レビュアー賞 (テラウチマサト氏 )
2020 「IPA2020 - International Photography Awards 2020」 プロフェッショナル部門 ファインアート Honorable mention
2021 「14th International Color Awards」プロフェッショナル部門 アブストラクト ノミネート
2022 「芦屋写真展 Road to PARIS 2022」ネイチャー部門 審査員賞
2024 「芦屋写真展 Road to PARIS 2024」佳作
河田美奈枝『TREMOLO』
発行日:2025年5月5日
発行人・編集:吉野千枝子
英訳:大久保素子
デザイン:石山さつき
発行:りぼん舎
【関連リンク】
https://www.minaekawada.com
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