top 本と展示写真集紹介平良博義『ぞめき』

平良博義『ぞめき』

2025/05/11
髙橋義隆

平良博義『ぞめき』がGALLERY NIEPCEより刊行された。


荒れた粒子のモノクロ写真が魅力的で、躍動感が伝わってくる力強い作品集となっている。

 

阿波踊りでは祭りの前のざわめきや街を包む高揚感、また音楽にのり騒ぎ賑わうことを“ぞめき”という。
 
2011年8月、友人の田中君に誘われ高円寺の阿波踊りを見に行った時のこと。踊りを横目にビールを楽しむものだと決め付けていた私は既にほろ酔い気分だった。そんな中、苔作というパンチパーマの男達に出会った。見た目通りの力強い太鼓や鉦鼓(カネ)の音が振動となり内臓にまで響いてくる。酔いが一気に冷め、苔作の男達が鳴らす太鼓のグルーヴに夢中になっていた。この体験から次第に阿波踊りに興味を持つようになった私は、阿波踊りが供養の意味もあるということを知った。
 
徳島の津田地区ではお盆になると霊魂を慰めるために送り火を焚き、人々は音を鳴らし踊る。
大切な誰かが死んだ時、葬儀で盛大に踊りながら故人を送り出す連もいた。これらの光景は私が阿波踊りの供養の意味を知りたくて、実際に目にしたものだ。誰かの死は決して無駄になることはない。残された人々の胸の中に刻まれ、やがて踊りや音へと昇華されていく。阿波踊りの長い歴史には人々が繋いできた想いがある。それが街全体を包み込む熱気を生む。それこそが“ぞめき”なのだろう。
 
徳島、高円寺で見た活き活きとした表情で踊る人々の姿、鉦鼓(かね)や太鼓のグルーヴから感じた熱狂を、そして人々の想いを、この作品から少しでも感じていただけたら幸いである。
 
平良博義(あとがきより)

 

■プロフィール
平良博義(たいら・ひろよし)
法政大学社会学部卒業、現在フリーランスの写真家として活動中。近年ではライフワークとして自身のルーツである沖縄県宮古島を撮影している。写真集に『日々の川』(Zen Foto Gallery、2016年)、『深海』(GALLERY NIEPCE、2022年)など。

 
個展
2010年「PERSONAL PLANET」(GALLERY NIEPCE 四谷三丁目)
2019年「MYAHK vol.1」(GALLERY NIEPCE 四谷三丁目)
2020年「MYAHK vol.2」(GALLERY NIEPCE 四谷三丁目)
2022年「深海」(Nikon Salon 新宿)
2023年「MYAHK vol.3」(GALLERY NIEPCE 四谷三丁目)
2024年「MYAHK vol.4」(GALLERY NIEPCE 四谷三丁目)
2025年「ぞめき」(OM SYSTEM GALLERY)
 
グループ展
2015年 ヤングポートフォリオ 2014年展(清里フォトアートミュージアム、山梨県)
2016年 山本雅紀×平良博義×瀬頭順平写真展(Zen Foto Gallery、六本木)
2020年「自由より創造を」(檜画廊、神保町)
2022年「自由より創造を」(檜画廊、神保町)


収蔵作品
清里フォトアートミュージアム(2014年「日々の川」より7点収蔵)


CDジャケット
「ギター古事談」長尾景友 Produced by 久保田麻琴

 

  • 平良博義『ぞめき』
  • 発行所:GALLERY NIEPCE
    発行日:2025年3月20日
    監修:久保田麻琴
    アートディレクション:柿沼充弘
    プリンティング・ディレクション:大塚圭太
    印刷:株式会社八紘美術

 

【関連リンク】
https://note.jp.omsystem.com/n/n22cbe58fa848

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