top 本と展示写真集紹介王子直紀『川崎 6』

王子直紀『川崎 6』

2025/05/01
髙橋義隆

王子直紀『川崎 6』が刊行された。本作は2025年3月、東京・新宿のphotographers' galleryでの展示にあわせて制作された。
 
シリーズ6作目となる本作は、神奈川県川崎市にて撮影されている。川崎市は県の最東端に位置し、多摩川に沿って東西に細長く広がる市だ。東海道や中原道、大山道などの街道沿いには古くから栄える街が点在し、東側の臨海部から西側の丘陵部にかけては、戦前から京浜工業地帯の中核を担った工業地域、繁華街、高層住宅街や新興住宅地、果樹園など、性格の異なる地域が混在している。
 
王子は活動初期から現在まで、厖大な量のスナップショットを撮り続けることで川崎という場所に関わってきた。「川崎」では、場所をあからさまに象徴するようなものが写されることはなく、そこに暮らす人や動植物、看板や建物などが、ときにはてらいなく真正面から、ときにはブレやボケをともなって写されている。

 

王子はそうした写り方を、効果や演出としてではなく、カメラという光学装置を媒介にすることでしか得られない原理的なものとして肯定し、受け入れてきた。そうして写された写真はどこか馬鹿馬鹿しさや滑稽さ、ときには寂しさや機知を感じさせると同時に、その場所に触れさせられたような感覚を与える。

 

王子にとって「川崎」は、象徴的ではないものを撮り、カメラの原理を肯定し続けるなかで川崎という場所を立ち現そうとする試みだ。

 

■プロフィール

王子直紀(おうじ・なおき)

1977年 東京都生まれ

1999年 東京造形大学卒業

 

王子直紀『川崎 6』
サイズ:A5判変形、カラー
ページ:32ページ
価格:900円+税
発行:KULA
発売:photographers’ gallery

 

【関連リンク】
https://pg-web.net/exhibition/kawasaki-6/

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