top 本と展示写真集紹介矢島陽介『a way of seeing』

矢島陽介『a way of seeing』

2025/04/09
髙橋義隆

矢島陽介『a way of seeing』が刊行された。本作は2024年10月25日から11月5日まで東京新宿のAlt_Mediumで展示された。
 
このシリーズは、矢島が自ら撮影した写真をモチーフに絵を描き、さらにその絵を撮影するというプロセスが中心となっている。モチーフは、絵画や写真における基礎的な対象であり、これまで矢島が繰り返し撮影してきた被写体である静物写真と、後ろ姿のポートレートで構成されている。絵は、ネガフィルムのように反転した状態で描かれたものもあり、それをフィルムで撮影することでネガ上に正しい絵が浮かび上がるという構造が生み出される。
 
矢島は、キャリア初期に読んだスーザンソンタグのテキスト「A Little Summa(小さな大全)」の一節が、その後の活動に影響をもたらしていると言う。
 
『 Photography is, first of all, a way of seeing. It is not seeing itself. 』
(まず初めに、写真は見るための手段であり、見ることそれ自体ではない)
 
また、同じくキャリア初期に、世界同時多発テロのニュースを見たこともその後の制作に大きな影響を与えていると言う。アメリカとイラクのニュースが飛び交う中、矢島は” 表だと思っていたものが実は裏から見たら裏だった”というごく当たり前のことを改めて意識される。それは社会に対するある種の懐疑的な視点を矢島に植え付け、結果としてネガとポジの構造を介した本作の制作にも繋がっている。
 
矢島は本作において、フィルム写真の構造を用いながら絵画と写真の境界を探る過程を提示しつつ、見る側の認識のあいまいさを含めた今日のわたしたちを取り巻く「ものの見方」について考察することを試みている。
 
■プロフィール
矢島陽介(やじま・ようすけ)
1981年生まれ。
2009年「1_WALL」入選以来、積極的にグループ展や個展などで作品を発表。
2013、14、16 年にはオランダ・アムステルダムで毎年開催される「The Unseen Dummy Award」(Unseen)で入賞。
また、2017 年にはIMAプロジェクト主催「LUMIX MEETS BEYOND2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #5」(IMA gallery / 東京)に出展し、2015年には写真集『Ourselves / 1981』(自費出版)を刊行。

 

矢島陽介『a way of seeing』
サイズ:295mm×210mm
ページ:68ページ

 

【関連リンク】
https://altmedium.jp/post/202410yajimayosuke/

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する