澤田育久『Reduction / Outline / Interpretation』が刊行された。
澤田はこれまで、代表作「closed circuit」など、写真を使って物の見え方の発見を試みる作品を発表してきた。本作『Reduction / Outline / Interpretation』では、古いコンパクトデジタルカメラを使用している。たとえ荒い画像でも、いくつかのイメージは写っているものや状況を認識または予想することができる。それは、私たちは知識によってイメージを補完し、写真を作り上げていることを示唆している。
澤田のイメージは、写真から対象の情報を削ぎ落としたとき、どこまで写真が写真であり得るのか、何が写真を写真たらしめているのかを問いかける。
■Statement
私が写真を撮るとき、対象が何であるかーそこに写るものの名称や役割などーの情報を必要とせず、ただ線と面と色のみに反応して写真を撮ってゆく。つまり私が写真にしている対象は、ものそのものではなく、対象の関係性であるとも言えるだろう。もの同士の関係性から導かれる線と面や色を利用して画面を作ってゆくとしたら、明確に表され、意味を喚起させる対象はそれ自体がノイズとなってしまうのではないか。それならば具体的なものを捨象して線と面と色に還元してしまえば、そこにはイリュージョンや物語が排除され、視覚的な解釈だけに委ねられた、純粋な構造としての風景が現れるのではないか。知識による認識を払拭し、純粋に表面に見えるものだけにイメージが還元されることを期待するが、解像していない写真は却って知識による解読を誘い、イメージは補完されてしまうだろう。しかし、そのとき写真と対象の関係はイコールではなくなり、それによって写真が対象から解放されていくことを期待する。
■プロフィール
澤田育久
1970年生まれ。写真家。金村修ワークショップ参加。2012 - 2013 年「The Gallery」、2014
年よりオルタナティブ・スペース「The White」をそれぞれ主宰。澤田はカメラが持つ記録性や機械性を利用して、日常的な視覚で認識されていない、新たなものの見方を発見することを試みています。2011年より継続的に取り組んでいる作品、"closed circuit"では、多くの人が見知っている公共の場所(駅)で撮影された写真を大きくプリントし、展示空間の中で重層的に展示。鑑賞者が写真の間を歩くことでイメージ同士が干渉し、関係性の解体と再構築によってもたらされる新たな風景の発生を試みました。
主な展覧会として、αMプロジェクト2017『鏡と穴-彫刻と写真の界面』vol. 2(キュレー
ター:光田ゆり氏 / 2017 / αM / 東京)、「space / guide / volume」(2021 / CAVEAYUMIGALLERY/ 東京)、1年間にわたる毎月新作による連続展「closed circuit, monthly vol.1- vol12」(The Gallery / 東京)など。2021年『BIENNALE DE L'IMAGE TANGIBLE』(パリ)参加。2017 年に自身のレーベル“The White”より写真集『closed circuit 』刊行、2018年にRONDADEより『substance』刊行。
澤田育久『Reduction / Outline / Interpretation』
サイズ:A6
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