「過激派」©Kazuo Kitai
大阪のG&S根雨で「北井一夫という写真家:第1期「抵抗」「過激派」「神戸港湾労働者」「川口鋳物衆」「三個シリーズ」など」が開催される。
「2025年 G&S根雨の1年間」
写真を撮るようになってから60年が過ぎ私は80歳になった。なぜこんなにながく写真をつづけられたのか分からないのだが、面白かったというような気がする。
抵抗、過激派、バリケード、三里塚、流れ雲旅、いつか見た風景、沖縄放浪、1973年中国、村へ、境川の人々、ロザムンデ、新世界物語、ドイツ表現派紀行、アントニオ猪木,信濃遊行、フナバシストーリー、おてんき、1990年代北京、ライカで散歩、三個シリーズ、道、写真と絵具。思いつくままに60年間に撮った写真をならべてみた。何をどう撮るかを考えるその根っこにはいつも反抗があったような気がする。とにかく人の忠告を聞かなかった。いま思えばその忠告を聞かなかったから60年間やってこれたのだと思う。聞いていたらつまらない普通の写真家になっていたと思う。
そんな私のような写真家を評価してくれるギャラリーが大阪に出来た。「G&S根雨」というのだが、2025年の1年間をとおして私の写真だけを展示してくれることになった。こんなことは二度とないと思う。せっかくなのでいつもとは違う写真展にしたいと考えている。
今までは展示することのなかったRCプリントやキャビネ。六つ切サイズの編集用にしていたプリントなども出してみようと考えている。たぶんめずらしい展示になるのだと思う。
80歳の区切り目としていい1年間にしたい。これは大阪のギャラリー根雨だけでしかやれない展示なので、遠くにいる人は、少し大変だが大阪まで見に来てほしい。
北井一夫
2024年11月
間(ま)のある写真
北井さんは、わたくしの思い出の中にいた。とある内科医院の待合室、木のテーブルにアサヒグラフが置いてあり、表紙や見開きに、その写真を見出していたのである。中学生なりの浅い理解だが、継続して見据えた最初の写真家という意味で…。ファン心理の芽生え。
アサヒカメラの読者に…。「村へ」「そして村へ」の連載を、舐めるように見続けた。どうして田舎ばかり撮るのだろう?素朴な疑問の中で、写真の多様な力を理解させる観察眼が向上していった。この状況下、衝撃の出会いが二度ほどあった。一回目は「田舎道」という作品。「えっ!何でこれが、作品になるの。」が初見の感想。だが、観れば見るほど味がある。冬枯れの雑木林、真横に引かれた土くれの田舎道、そこから土手へ、叢も…。散らしたように芽吹いたフキノトウは、季節の推移、眼に見えぬ鮮やかな間合いを際立たせた。二度目は「葉裏」一瞬の疑問符は、風に翻る葉裏の表情から印画紙の面積をはるかに超えて、拡散するムーブメントを伝える充実に置き換えられた。誰も撮らぬ、いや撮れんと自得した。
2025年1月12日、5年目を迎えたG&S根雨で、通年企画「北井一夫という写真家」を始める。展示は狭いながらも6度の架け替えを通じて、北井さんの写真家生活60年を俯瞰する、いわば作家の全体像に及ぼうとしている。人間、風景、動物、物体、あらゆる事象を絶妙な間で結び、時間を捉えた写真家。
いまふと思うのだが、北井一夫さんの写真に、能の舞台や、音楽が醸し出す間を感じることが多々あった。チョンと拍子木が鳴る。一年の間、わたくしは北井一夫に浸ろうと考えている。
石井仁志(G&S根雨主宰)
2024年12月
■展覧会情報
北井一夫という写真家:
第1期「抵抗」「過激派」「神戸港湾労働者」「川口鋳物衆」「三個シリーズ」など
会期:2025年1月12日(日)~2月28日(金)
時間:13:00〜19:00
休廊日:水曜、木曜、1月19日(日)
会場:G&S根雨
住所:大阪府豊中市服部元町1-6-1-1F
■プロフィール
北井一夫(きたい・かずお)
1944年、満州鞍山生まれ。日本大学芸術学部写真学科中退。『三里塚』『村へ』『いつか見た風景』『フナバシストーリー』『1990年代北京』などドキュメンタリー的な写真を撮影、発表してきた。1972年、第22回日本写真協会新人賞。1976年、第1回木村伊兵衛写真賞。2013年、日本写真協会作家賞を受賞。出版物は膨大、2020年10月に平凡社より『過激派の時代』も発刊。個展も多数開催。
【関連リンク】
https://gsneu.info/kitaikazuo2025/
出展者 | 北井一夫 |
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会期 | 2025年1月12日(日)~2月28日(金) |
会場名 | G&S 根雨 |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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