top 本と展示展覧会ピックアップ滋賀県立美術館で「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」が開催

滋賀県立美術館で「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」が開催

2025/01/06

滋賀県立美術館開館40周年記念「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」が開催される。
 
ふと目に入った日常の「モノ」にレンズを向ける。カメラを手にしたことのある人であれば、誰しもが経験したことがある行為ではないだろうか。カメラからスマートフォンへ、撮影するという行為はさらに一般的になり、SNSの普及により「モノ」を撮影した多くの写真が世界中に溢れている。
 
タイトルの「ブツドリ(物撮り)」という言葉は、もともとは商業広告などに使う商品(モノ)を撮影すること。この「ブツドリ」を「物」を「撮」るという行為として広く捉えてみると、写真史の中で脈々と続いてきた重要な表現の一形式であることに気がつく。
 
本展は「モノ」を撮影することで生まれた写真作品を、この「ブツドリ」という言葉で見なおし、日本における豊かな表現の一断面を探る試みだ。重要文化財である明治期の写真原板から、文化財写真、静物写真、広告写真、そして現代アーティストの作品まで、200点以上の写真作品を出品する。
 
■展覧会の構成
1.たんなるモノ
本章では、幕末の写真家・島霞谷が撮影した《鮎》と《頭蓋骨標本》と、モノを撮影することを実験的に思索した大辻清司の「大辻清司実験室」に掲載された作品、日常を独自の表現として昇華した川内倫子の〈M/E〉を展示する。島の《鮎》をじっくりと観てみると、妙に揃った尾鰭やまな板上の配置に構成的な要素を見出すことができる。また《頭蓋骨標本》は、島が大学で写字生をしていた頃に撮影されたものとされている。もちろん写字生として記録のためという側面もあったであろう。しかし、頭蓋骨は静物画でもよく用いられるモチーフ。その造形や連想されるイメージは、「たんなるモノ」以上の豊かさを持っている。
 
2.記録と美
明治政府による文化財保護への初めての施策であった壬申検査(明治5年)では、写真家・横山松三郎が随行し、正倉院宝物や仏像などの写真が撮影された。本章では、重要文化財に指定されている壬申検査のガラス原板、作家性をおび始めた頃の古美術写真、そして仏像写真におけるそれぞれの眼差しをみてゆく。また、これらの文化財写真とともに、古書をオブジェとして撮影した潮田登久子の〈Bibliotheca〉を展示する。
 
3.スティル・ライフ
明治から大正にかけての日本では、写真に芸術性を求めるアマチュア写真家らを中心に絵画的な写真が志向された。いわゆるピクトリアリズムと呼ばれる写真動向において、1920 年代より、一部の芸術写真家らは、静物写真に注目しはじめる。これらの1920年代、30年代の静物写真とともに、本章では、母の遺品を撮影した石内都の〈mother’s〉、物体を撮影することで他者からの見え方を模索する安村崇の〈態態〉を展示する。
 
4.半静物? 超現実? オブジェ?
1930年前後から、カメラやレンズによる機械性を生かし、写真でしかできないような表現を目指した写真が盛んになる。これらのいわゆる新興写真は、ドイツの新即物主義(ノイエザッハリヒカイト)やシュルレアリスムに影響を受け、前衛写真へと引き継がれてゆく。本章では、モダンフォトグラフィの潮流の中で、前衛的な写真表現をおこなった中山岩太や安井仲治などの作家の作品を展示する。これにあわせて、オノデラユキの〈古着のポートレート〉、野菜や魚などの食材や、花や昆虫を素材として特異なオブジェを制作する今道子の作品も展示し、前衛写真との表現上の共通性を概観する。
 
5.モノ・グラフィズム
本章では、モノをめぐるグラフィックデザインとして、日本における初期の広告写真から、ポスターなどの広告にみられるグラフィック表現を紹介する。また、ホンマタカシが猪熊弦一郎のアンティークコレクションを撮影した『物物』のプロジェクトを展示する。
 
6.かたちなるもの
新興写真や前衛写真に影響を受け「造型写真」という言葉で独自の表現を目指した坂田稔。動植物を即物的に捉えた写真集『博物志』を発表した恩地孝四郎。日本の伝統的なデザインから、さまざまな「かたち」にフォーカスした岩宮武二。日本の写真における抽象表現の先駆的な存在である山沢栄子。カラフルなスポンジを組み合わせ造型化した鈴木崇の〈BAU〉。本章ではモノの「かたち」に着目した写真家の作品を紹介する。

 

  • ■展覧会情報
    滋賀県立美術館開館40周年記念「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」
    会期:2025年1月18日(土)~3月23日(日)
    時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)
    休廊日:月曜日(ただし休日の場合には開館し、翌日火曜日休館)
    会場:滋賀県立美術館
    住所:滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1
    観覧料:一般1,200円(1,000円)/高校生・大学生800円(600円)/小学生・中学生600円(450円)
  • ※( )内は20名以上の団体料金
  • ※企画展のチケットで展示室1・2で同時開催している常設展も無料で観覧可
  • ※未就学児は無料
  • ※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳をお持ちの方は無料

 

■展覧会関連イベント
◆シンポジウム「モノと写真:近代から現代へ、その視点」
モノと写真をテーマとしたシンポジウム
日時:3月9日(日)13:00~15:45(事前申込不要/無料)
登壇者: 金井 直(信州大学人文学部教授)、前川 修(近畿大学文芸学部教授)、光田ゆり(多摩美術大学大学院教授・アートアーカイヴセンター所長)
場所:木のホール
定員:100名
 
◆グラフようちえん in 滋賀県立美術館「写真作品を撮ろう」
幼児から小学生まで参加できるワークショップ
日時:2月8日(土)10:00~16:00(事前申込不要/無料)
場所:ギャラリー

企画:graf
 
◆たいけんびじゅつかん「フォトグラムに挑戦!」
小・中学生とその保護者の方を対象とした、展覧会の鑑賞と創作体験がセットになったワークショップ
日時:1月26日(日)、2月23日(日)各13:00~16:00

※要事前申込/抽選/要参加費(保護者の方のみ要観覧料)
講師:徳永写真美術研究所
場所:ワークショップルーム
定員:各回10名
 
◆学芸員によるギャラリートーク
日時:1月18日(土)、2月16日(日)、3月15日(土)各14:00~15:00

※事前申込不要/当日先着/要観覧料
場所:展示室3
定員:各回20名程度

 

■ドロップインワークショップ
本展では、展覧会の最後に、鑑賞者がいつでも楽しめるワークショップコーナーを設ける。展覧会を通して感じたことをかたちにすることができる。
 
【関連リンク】
https://www.shigamuseum.jp/exhibitions/6277/

展覧会概要

会期 2025年1月18日(土)~3月23日(日)
会場名 滋賀県立美術館

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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