須藤絢乃「MISSING」©Ayano Sudo
東京恵比寿のMEMで須藤絢乃「MISSING」が開催される。
被写体の変身願望や理想像、写真の中で実現できる自己を追い求め、性別や美的価値観を揺さぶる作品を発表してきた須藤絢乃の新作個展。
須藤は写真を始めた当初「自分ではない誰か」への強い憧れをもとに、まるで人形遊びのように衣装や化粧でなりたい姿を撮影した《Metamorphose》シリーズの制作を続けていた。その後20代半ばに大病を患い、ままならない身体を“ヒトガタ”と思う感覚が強くなる中で、駅の片隅に貼られた「尋ね人」のポスターが目に留まる。とある失踪した少女の捜索願の情報が書かれた貼り紙に、駅の中を行き急ぐ人々は目もくれず、十年以上行方のわからない少女が写真の中にひっそりと佇んでいた。貼り紙の写真は”行方不明である”ことを知らせると同時に、少女たちが確かに”生きていた”証でもある。須藤自身もいつか人知れず消えてしまうのかもしれないという不安や恐怖を抱える中で、他人事ではない彼女たちの存在を強く意識させられた。その一人ひとりが生きていた時の輝きを作品に残そうと、彼女たちに自ら扮したシリーズ《幻影 Gespenster》を2014年に発表する。
《幻影 Gespenster》から10年後に制作された新作は《鬼が栖むか蛇が栖むか》と題され、さまざまな時代で強烈な印象を残した女性たちに須藤が扮するセルフポートレート作品だ。
—やっぱり、気になってしまうのは、居なくなってしまった人たちの事であった。それぞれの時代にアイコニックな姿を私たちの記憶に焼き付けながら、現在では消息不明の女たちが居る。
インターネットでいくら検索しても彼女たちの今を知る術はない。わずかにヒットする不鮮明な画像を凝視する。情報を脳内で補填し、解像度をあげてゆく。彼女たちは、私の身体を通してミッドナイトブルーの世界に立ち現れる。
(須藤絢乃、展覧会「MISSING」制作ノートより)
モデルにした女性たちは衣装や化粧に絶対的な特徴があり、名前は出さなくとも知る人には一目でわかるほどのアイコニックな存在だ。須藤は当時の限られた情報から彼女たちの輪郭を捉え、象徴する装いを纏い、克明に写し出そうとする。写真はかつて存在した事実を記録し、私たちの目に触れる度に、存在していた時の姿のまま立ち現れる装置でもある。行方不明の少女たちも、時代のアイコニックな女性たちも、他者のままではなく自分ごととして捉えるためにも須藤はセルフポートレートという手法を選んだ。本展では9名の女性たちに扮する写真を展示する。
- ■展覧会情報
須藤絢乃「MISSING」
会期:2024年11月30日(土)~12月22日(日)
時間:13:00〜19:00
休廊日:月曜日 (月曜日が祝休日の場合は開廊し、翌平日休廊)
会場:MEM
住所:東京都渋谷区恵比寿1–18–4
■トークイベント
日時:2024年12月20日(金)18:30〜
登壇者:椹木野衣、須藤絢乃
会場:MEM
参加費:1200円
定員:20名・要予約
【関連リンク】
https://mem-inc.jp/2024/10/27/sudo2024/
出展者 | 須藤絢乃 |
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会期 | 2024年11月30日(土)~12月22日(日) |
会場名 | MEM |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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