須藤昌人『デコトラ』が刊行された。
本書のあとがきを下記に引用する。
1975年、19歳春。
写真学校の進級制作を模索していた頃、高速道路での“デコトラ”との出会いに衝撃を受けた。それは、幼年期から親しんでいたSL(蒸気機関車)とイメージが重なり私の写欲を駆り立てた。撮影に使用したカメラは、スイスジナー社の大型で重くアルミトランクに入った物ものしい機材であった。4×5インチポジフィルムにて制作。
撮影のため幾度となく築地市場に足を運び、夜中から朝まで粘るも、思った様な“デコトラ”に出会えず困惑していると、友人山辺洋氏が「横浜駅の近くに“塚本屋中村商店”があるから見に行ってくれば」とトラック野郎のメッカを教えてくれた。
大きなアルミケースと大型三脚を持って、恐る恐る商店の扉を開ける。
古びた応接室のソファに深々と座った、短髪で恰幅の良い方が見える。
その人物こそ、初代歌麿会会長・宮崎靖男氏であった。
同席して話し込んでいるのが、塚本屋中村商店社長の中村保次氏であり、私にとって忘れられない衝撃的な日となった。
その日から学校の授業が無い時は必ず朝から晩まで商店に入り浸っていた。
塚本屋中村商店の専属小僧カメラマン兼雑用係の如く、社長から「シャッター閉めとけ」と言われるまで手伝いをしていた。カメラを持ち込んで絢爛豪華な“デコトラ”の登場を心待ちにしていた日々を懐かしく思う。あれから半世紀の時が流れたが、今見ても個性的で力強く、色褪せない“デコトラ”たちを堪能していただきたい。
須藤昌人
須藤昌人『デコトラ』
発行年:2024年
部数:500部
ページ数:192ページ
出版:KOMIYAMA
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