小島一郎『正方形の故郷』が刊行された。
本作は日本の三大ドヤ街のひとつ横浜の寿町で、10年間かけて、そこに暮らす人々と街を撮影したものだ。
この町は、一辺がおおよそ300メートル。
グーグルマップで見れば、ほぼ真四角の形をしていることがわかる。
この町で死ぬ人はいるけれど、この町で生まれる人は滅多にいない。
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「これ500円で買わない?」と、偽ブランドの腕時計を、いくつもポケットに入れていたカワカミさん。
生活保護を切り詰めて注ぎ込んだ競艇で、いつか大金持ちになることを夢見ていたスダさん。
てっきり男だと思っていたナンシーが、ある日、金髪のカーリーヘアと網タイツで現われた。
天涯孤独だったツンくんが、フィリピンで生きているお父さんを、フェイスブックで発見。お金をかき集めて会いに行った。
屋上に敷いた布団で眠る人は、今夜、月を眺めるだろうか。
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もう少し撮らせて欲しいと言う僕を残して、彼らは住み慣れた小さな部屋へ消えていく。
このわずか300メートル四方の中に、生まれた場所ではないけれど、彼らが彼らでいられる町がある。
- 小島一郎『正方形の故郷』
- 初版発行日:2022年9月30日
- 発行:写真表現社
判型:250×250mm、72ページ、上製本
定価:3,000円+税
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