東京・品川のキヤノンギャラリーSで鶴巻育子写真展「ALT」が開催される。
本展は、写真家・鶴巻育子氏が視覚障害者との関わりをきっかけに取り組んできたプロジェクトの集大成として、「みること」について思考を巡らすことを目的とした展示だ。
会場は3つのセクションにより構成される。セクション1では、氏が視覚障害者と対話しながら彼らをモデルに撮影したポートレートを展示する。セクション2では、視覚障害者がそれぞれの見え方を「言語化」したものを氏が「写真化」するという試みのもと撮影した作品を展示する。
■作家メッセージ
目を使って仕事をする写真家の自分とは対極にある「見えない、見えづらい世界」を覗いて見たい。そんな好奇心から始まったプロジェクトの第二弾が「ALT」です。
人は情報の80~90%を視覚から得ていると言われています。取材当初、私はその情報を得ずに生きる視覚障害者の人々の苦労ばかりを想像していました。しかし個人差はあるものの晴眼者となんら変わりない彼らの生き方を目の当たりにし、また「視覚障害」と言っても個人個人異なった見え方で、簡単にカテゴライズできるものではないことを知りました。私は知らず知らずのうちに、先入観や偏見を抱いていた自分に気づきました。彼らと会い対話する時、言葉が最も重要なツールとなります。そこではミスコミュニケーションが生じることもあり、言葉でのやり取りにおける難しさを実感せざるを得ませんでした。しかし当然ですが、それは相手が晴眼者であっても起こり得るものです。私は他者との認識のズレに違和感を抱くより、まずは自分の知らない領域に一歩足を踏み入れてみることを優先しました。すると、私ひとりでは辿り着けなかった気づきやアイディアが浮かび、新しい世界が見えた気がしました。
約4年の間に多くの視覚障害者の人々と時間を共有した中で最も興味深かったのは、彼らが頻繁に「みる」という言葉を口にすることでした。私は改めて見ることの意味を考えるようになり、いかに自分の視野が狭いかを思い知る体験をしたのです。目で見ることが全てではない。感じることは見ること。見ることとは何か。
「視覚障害者に興味を持ってくれるのが嬉しい」「面白い形で自分たちの世界を表現してもらいたい」など彼らの言葉が支えとなり、この作品を完成することができました。
ALTとは
alternateの略
代わりのもの、代替え、交互の、他の可能性、他の手段
X(旧Twitter)では「+ALT」ボタンは代替えテキストの略称で、画像の説明を示す用語として使われています。
「撮る、撮られる」から始まった氏と視覚障害者の関係性は、最後は並走する形に変化し、セクション3は両者がカメラを持ちながら街を歩き撮影した写真で構成され、自分の目で見ているものがすべてではないと気づくきっかけを与える。セクション1から3まで、計100点を超える作品を展示する。
展示作品は、すべてキヤノンのプリンター「imagePROGRAF」でプリントし展示する。
- ■展覧会情報
鶴巻育子写真展「ALT」
会期:2024年9月27日(金)~11月11日(月)
時間:10:00〜17:30
休廊日:日曜日、祝日
会場:キヤノンギャラリーS
住所:東京都港区港南2-16-6 キヤノン S タワー 3F- ■トークイベント「見えない、見えづらい世界」を見えるカタチに
日時:2024年10月5日(土) 14:00~15:30
ゲスト:柿島貴志(Poetic Scape代表・ディレクター)
内容:本展のキュレーションを担当したPoetic Scapeの柿島貴志をゲストに迎えし、「見えない、見えづらい世界」を写真展として「見えるカタチ」にするための試行錯錯誤と、その過程で得た気づきについて語る。
定員:150名 (先着申込順・参加費無料)
■プロフィール
鶴巻 育子 (つるまき・いくこ)
1972年東京生まれ。写真家。1997年の1年間渡英し、語学を学ぶ。帰国後、周囲の勧めで写真を学び始めた。カメラ雑誌の執筆や写真講師など幅広く活動する一方、2019年に東京・目黒に写真ギャラリー「Jam Photo Gallery」を開設し、著名写真家の企画展や若い写真家への場の提供、アマチュアの育成にも力を注いでいる。国内外のストリートスナップで作品を発表しながら、視覚障害者の人々を取材し「みること」をテーマとした作品にも取り組んでいる。主な個展は「芝生のイルカ」(2022年/ふげん社)、「PERFECT DAY」(2020年/キヤノンギャラリー銀座・梅田)、「3[サン]」(2015年/表参道スパイラルガーデン)など。主なグループ展に「icon CONTEMPORARY PHOTOGRAPHY II」(2022年/AXIS Gallery)やアルファロメオ企画展「La meccanica della emozioni」(2017年/寺田倉庫)などがある。
柿島貴志(かきしま・たかし)
Poetic Scape代表・ディレクター
Kent Institute of Art and Design(現UCA/イギリス)Visual Communication course photomedia卒。2011年より東京・中目黒にてギャラリーPOETIC SCAPEを運営。写真をキュレーションの軸に据えながら、 近年は写真以外の作品も取り扱っている。また写真作品の額装や、執筆、講演なども行う。2017年より2021年まで京都芸術大学 芸術学部 通信教育部 写真コース非常勤講師。
【関連リンク】
https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/tsurumaki-alt
出展者 | 鶴巻育子 |
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会期 | 2024年9月27日(金)~11月11日(月) |
会場名 | キヤノンギャラリーS |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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