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外苑前のLAGで中島隆誠「I Trust Your Story」が開催

2024/09/18

中島隆誠「I Trust Your Story」©Ryusei Nakajima

 

外苑前のLAG(Live Art Gallery)で中島隆誠「I Trust Your Story」が開催される。
 
2022年、高校中退後わずか17歳で現代アートの登竜門のひとつである「GEISAI#21」にてタカノ綾賞を受賞した中島は、その後Hidari Zingaroでの個展開催や各種アートプロジェクトへの参加など、デジタル領域に対しての課題意識を制作起点とした絵画作品や詩的なテキストなど多様な形態を用いて作品を発表してきた。
 
パンデミックによる特殊な状況下での学生生活や、現実と仮想が入り混じるオンラインカルチャーの受容などを通して、社会構造の不自由さの中で他者との共有不可能性を感じていた中島は、その閉塞感を打破する手段として、虚実を超えた世界を現出させる可能性を持つ「物語」の力を信じるようになる。
 
本展では、認知症の祖母の虚妄を聞く介護体験や、イラストレーター黒田征太郎氏との出会い、日本の旅芸人や盲人伝説における語りへの共鳴など、様々なコンテクストとの接触を通じ、自身の身の回りの出来事や時に空想も交えてそれぞれの物語を紡ぎ制作した絵画作品を中心に発表する。

 

■Artist Statement
私は、下駄箱の隅でカメラを構える新聞記者のタイトルコールを受けて、「日常の再開」へと送り出されたが、パンデミックによる既存の現実の破棄や変更に際して、もはや学校帰りのオンラインゲームがオンラインゲーム=学校となったかのような状況下で、こちらから仮想化された現実に自由な解釈で意味を採用しようとアプローチする以前に、その解釈可能性を担保するための力学の中に組み込まれてしまい、実のところ、再開の社会的コンセンサスとは異なる新たな出発を強いられている。私は、同時期より、自分の断絶を、多様なバリエーションを反映するサムネイルの潜在性に擬態させ、ここぞとばかりに解釈案を誘致し、デジタルプラットフォームの内外でコンテンツとして送受信する試みを行ってきた。しかし私は、それを通して、むしろ自分自身の生の解釈の決して完結しないたらいわましに向き合うことで、見出されることを拒否し、現実の喪失のほうを考えていくようになった。
 
さて、そして私は、なぜか「物語」と遭遇してしまい、耳を傾けないではいらない。たとえば、認知症の祖母が、忘却によって欠如した現実に戯言めいた語りを紡ぐことに付き合うのもそのひとつで、それは、生の解釈を打破できないというただ唯一信じられる敗北において、それでもこの通り、ずっと生きてきましたからね、と、ちゃんとこれまでのことに貫かれているという感覚を自ら喚起する行為、死の作劇である。もたついた生が、いち時代の盲目を超えた絶対的な闇のひろがりに包まれながら、私に向かってふらふらとやってくるとき、お互いが、おそらく永遠の敗北の気配を帯びた闇のもとに、置き去りにされて怯え、両成敗で失明状態へ潰されていくその瞬間、私たちは、笑みをこぼし、うれしそうでもある。出会いの兆しを感じ取るのかもしれない。 落ちこぼれたものが、かなしみを託し合う「物語」に仕向けられることは、再開の時代に仕組まれることに不信や怒りを吐きもした17歳の途切れ途切れの暴発とはわけがちがい、ふしぎにも祝福を受け取ることでありうるのだ。そのほんのちょっとの瞬間だけで、恐ろしく長い持続的なかなしみを生きてきた人間の仕業によれば、私たちは、闇の中の数多の「物語」に感触し、仮想や虚構が、それ自身を超克してつづくもうひとつの眼や土地に接続するメディアをすでに獲得しているのではないか。だから私の営為も、現実が与えられる繰り返しや自由に幽閉されるうそっぱちそのものであり、かつそれを受け入れてさみしく白状するためのさらなる絵空事に過ぎない。しかも私は、いつも闇を気づかないうちに潜り抜けてしまって、またもや、ひとりで目一杯反射する光がみえる。そのとき、二度目の、こんどはひどくみっともない敗退を痛感する。どうやら私は、至ることなく、わかった気になるだけのちっぽけな時間を生きていて、瞬間瞬間を撃ち抜こうなどと構える不誠実さを露呈しては、すぐによろけて、語りを引き出し、それに呼応してみる他ない。
 
中島 隆誠

 

  • ■展覧会情報
    中島隆誠「I Trust Your Story」
    会期:2024年9月13日(金)~9月28日(土)
    時間:18:00〜20:00
    休廊日:日曜日、月曜日、祝日
    会場:LAG
    住所:東京都渋谷区神宮前2-4-11 Daiwaビル1F

 

■プロフィール
中島隆誠(なかじま・りゅうせい)
2004年生まれ。東京都立西高等学校中退。

・主な受賞
2024.2 Shibuya Art Awards 2024入選
2022.12 田川市美術館主催 タガワアートビエンナーレ英展準大賞受賞
2022.8 GEISAI#21 審査員賞受賞(タカノ綾氏による選出)

・個展
2024.4 “hybrid newborns became absent kids”(ありかホール/東京)
2022.10 “I am home (super platform)” (Hidari Zingaro/東京)

 
【関連リンク】
https://www.live-art-books.jp/lag/exhibition/ryuseinakajima/

展覧会概要

出展者 中島隆誠
会期 2024年9月13日(金)~9月28日(土)
会場名 LAG(LIVE ART GALLERY)

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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