藤原 敦『櫻川』が刊行された。
2020年コロナ禍の夏、北関東のとあるホテルに住み込むことになった。
そのホテルの横には櫻川という川が流れていた。
未だ見もせぬ常陸の国に名も櫻川ありと聞きて
― 紀貫之 能謡曲『櫻川』より
藤原 敦
新刊写真集『櫻川』の刊行を記念し、2024年9月27日より禅フォトギャラリーにて、写真集より選りすぐりのカラー写真作品約20点を展示する。また会期中の9月28日には写真評論家のタカザワケンジ氏を迎え作家とトークイベントを行う予定だ。
コロナ禍に世界中が直面していたあの頃。たまたま桜川の近くに長期滞在することになった藤原は、直感のままに川の撮影を始めた。ある時、藤原はこの地が能の『桜川』の舞台であることを知る。『蝉丸』ですでに能の世界に自作との通路を見いだしていた藤原は、その偶然を糸口に作品の全体像を構想していく。能の『桜川』の物語が、カメラを手にした藤原の視線に影響していったのは間違いないだろう。(中略)
聖なるものと俗なるものとが入り交じるこの世界は、桜が散るようにつねならぬものである。だからこそ写真に留める価値がある。『櫻川』が能の世界と通じるのは、そうした作者の無常観である。
タカザワケンジ『現実と虚構を行き来する川のほとりで』より抜粋
- 藤原 敦『櫻川』
- 発行:ZEN FOTO Gallery
- 発行年:2024年
- 寄稿:タカザワケンジ
仕様:200×200mm、ハードカバー、120ページ、作品数110点、500部限定
定価:4,950円(税込)
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