top 本と展示写真集紹介高木 誠『生きている大地』

高木 誠『生きている大地』

2024/10/30
髙橋義隆

1957年愛知県岡崎市生まれ、第1回田淵行男賞受賞者である高木誠の最新写真集『生きている大地』が刊行された。
 
作者は、日本の第一級の山岳景勝地であり、国内外から年間 120 万人以上の観光客が訪れる上高地(長野県松本市)を自身のメインフィールドと据えて、20年以上撮影を続けてきた。本作は、一万二千年前の大噴火からの悠久の時の流れによって醸成された、上高地の美しい地形と、そこで育まれた原始的な自然に相対した時に感じられる「霊性」を表現したモノクローム作品だ。
 
森羅万象に魂を見る「日本人の自然観」を手がかりに、穂高岳などの高山と、梓川が時を刻み形作る谷や岩、そして多彩な生命が育まれる森林や湿原を通して、上高地の中に一つの輪廻を見出した。写真集は、その循環を表した4つの章「天 光と大気」「地の刻」「水は巡る」「森の輪廻」で構成されている。
 
日本人にとって、神仏や魂が宿る自然は心の拠りどころであり、縄文時代を源流とする宗教や文化・芸術の基底に流れるイデアとなっている。その神秘的な光景を捉える眼と、高い撮影技術、そして精緻にコントロールされたプリントワークは、高木が自身の五感を通して感じた心の震えを、余すところなく伝えている。深みある黒の表現をダブルトーン・オフセット印刷で実現した。
 
東京都現代美術館 事業企画長の関次和子氏、元 田淵行男記念館 副館長の財津達弥氏のテキストを収録している。

 

“作品からは、厳しい季節も含め、何度もこの土地に通い続けることにより、山と同化し、自然の中のリズムと自己の感性を共感させようとする高木の婆が伝わってくる。”
関次和子(東京都現代美術館 事業企画課長)
 
“この長年にわたる高木さんの試みには、現代社会への批評精神が内在している。光の及ばない黒い空間、目に見えない深い領域が、見る者の想像力を掻き立てるのである。”
財津達弥(元 田淵行男記念館 副館長)

 

高木誠『生きている大地』
寄稿:
関次和子(東京都現代美術館 事業企画課長)
財津達弥(元 田淵行男記念館 副館長)
デザイン:宮添浩司
サイズ:A4 変型(w240×h225mm)
仕様:上製スイス装・本文コデックス装
頁数:128頁
図版:モノクローム写真 56点収録(ダブルトーン印刷)
発行所:ふげん社
発行日:2024年9月1日
定価:税込4,950円(本体価格4,500円)

 

【関連リンク】
https://fugensha-shop.stores.jp/items/66b714797041a10aac273f5f

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する