top 本と展示展覧会ピックアップ第2回BUG Art Award ファイナリスト展が開催

第2回BUG Art Award ファイナリスト展が開催

2024/09/08

株式会社リクルートホールディングが運営するBUGでは第2回「BUG Art Award」の一次審査と二次審査を通過した6名のファイナリストによるグループ展を開催する。
 
2024年10月8日(火)にはグランプリ1名を選出するための公開最終審査を行う。グランプリ受賞者は、約1年後にBUGにて個展を開催する。設営撤去をあわせた作品制作費上限300万円と別途アーティストフィーが支給される。
 
BUG Art Awardは、制作活動年数10年以下のアーティストを対象に株式会社リクルートホールディングスが運営するアワードだ。審査員からのフィードバックの提供や、展示・設営に関する相談会の開催などのサポートを行い、審査過程においてもアーティストの成長に関与していく。BUGの前進であるガーディアン・ガーデンが31年間実施してきた『ひとつぼ展』(1992-2008)、「1_WALL」(2009-2023)を引き継ぎ、新しい表現への挑戦やアーティストのキャリア形成をバックアップする。
 
■ 応募総数265件から選出された6名のファイナリストによる展覧会
今回選出された6名のファイナリストの表現は、絵画、ドローイング、彫刻、インスタレーション、映像、メディアアート等多岐にわたる。6名から提出された展示プランに関するコメントを以下に紹介する。(五十音順)

 

新井毬子「Scapegoat」(メディアアート/彫刻/映像)
AI画像生成によって生まれたテクノロジーにおける新たな妖怪「Entity」(実体を意味する)。生成と生殖をオーバーラップさせながら、様々な手法によるイメージの大量の複製、編集の過程によって生成されたEntityはオリジナリティが曖昧になっている。類似と差異の基準はどこにあるのか。分類/カテゴリーの解体や、著作権などの法制度との衝突と回避から、生成物ひいては人間における曖昧な類似と差異について探っている。
 
岩瀬海「SRSシリーズ」(彫刻)
ジェンダーやセクシュアリティをテーマに彫刻作品の制作を行っています。生皮や人毛、木、石膏、鉄、FRPといった様々な素材を使って作品を作ることが多いです。SRSシリーズは、既存の法制度を出発点に、この国は何をもってして個人の性別を決定しているのか、そんなことを考えながら制作した作品です。医療や法制度から、当事者の置かれた暴力的でありながらもどこか儚く、緊迫したアンビバレントな状況を示唆しています。
 
志村翔太「モビル文学 東京ボーイズアンドガールズ」(メディアアート/映像/文学)
「モビル文学」シリーズは自転車を使った移動並びに投影技術を文学表現と融合させることを目指し、映像装置に改造した自転車を用いて作品発表場所を舞台に執筆した小説をキャンバスとしての街に描き出す連作です。本作「モビル文学 東京ボーイズアンドガールズ」では、BUG周辺の有楽町・銀座・日本橋を舞台に執筆した小説三作を映像として編集し、それぞれの街をサイクリングしながらテキストを投影した様子を展示します。
 
城間雄一「ある座」(絵画)
絵画という表現を使い人と人を取り巻く様々な関係性のあり方を、存在のようなものが立ち上がるように制作している。近年ではモチーフとそれが置かれている場に興味を持ち、その曖昧な繋がりを解体したりまたそれを接合したりして絵画空間の研究をしている。一度解体された私たちの情報を少しずつ間違えてパズルのようにはめ直し、違和感を持った一つの塊として絵画の中に表現しようと試みたりもしている。
 
宮林妃奈子「あいだの手」(絵画/ドローイング/インスタレーション)
粗い目の麻布や細やかな綿布、木や紙ひとつひとつの肌理などを「受け止めてくれる手」として絵を描く。自分が手を伸ばし、絵の中に触れ描いているかと思えば、「受け止めてくれる手」は私のほうまでやってきて、私を受容して解放する。そうして、私たちの手は行き来する。
絵と向き合うとき、私たちの周りには空気や広がりがあることを忘れない。身体的な距離はジェスチャーでもなく、温度や湿度を持った空間とともに存在している。
 
矢野憩啓「see-through」(絵画/ドローイング/インスタレーション)
①作者の属性やそれに関するモチーフ/出会ったものを描いた絵画作品と ②自立した展示空間 ③展示に使われる単語を説明する"単語帳"の3つから構成される展示です。
絵画は作者に付属する属性と出会ったモチーフの輪郭を曖昧にし、単語帳はそのモチーフ・属性・カテゴリーに貼られる単語や言葉の意味を浮遊させます。自身で組み立てた展示空間は、その浮遊した絵画と言語が、漂うように、また自由に出入りできるように組み立てます。

 

■ 約3ヶ月の準備期間を経て、より磨きをかけた最終展示プランを決定
展示位置をファイナリスト同士の話し合いによって決定することが、本展の特徴の一つ。お互いのプランを聞き、どうすれば自分の作品、そして6名の展示がより良く見えるかを議論し、展示位置を決定した。希望者には実際のBUGの空間で展示・設営のシミュレーションをする機会を設けている。プロのインストーラー(展示設営技術者)にアドバイスをいただきながら設営の技術面や安全面などの懸念点を解消し、各自プランをブラッシュアップしていく。設営を自分自身で実施することも、バグ展ならではの特徴です。ファイナリスト決定から展覧会が始まるまでの約3ヶ月間、6名は切磋琢磨し、準備を重ねている。

 
■会期中に、トークイベントと公開最終審査を開催
会期初日に開催するオープニングトークでは、BUG Art Awardに応募したきっかけや、展示作品について説明したり、質問をし合ったりなど、さまざまなテーマから6名を知っていただく楽しめるトークを企画している。また公開最終審査では6名のファイナリストが、バグ展の展示内容とグランプリを受賞した際の個展プランについてプレゼンテーションを行う。そのプレゼンテーションと展示作品、グランプリ個展プランの3つの要素をもとに審査を行い、審査員の議論を経てグランプリが決定する。最終審査は予約した方を対象に、全て公開(オンライン配信)で行う。

 

  • ■展覧会情報
    第2回BUG Art Award ファイナリスト展
    会期:2024年9月25日(水)~10月20日(日)
    時間:11:00〜19:00
    休廊日:火曜日
    会場:BUG 
    住所:東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー1F
  •  
  • ■ファイナリスト6名によるオープニングトーク
  • 日時:2024年9月25日(水)19:00〜20:30
  • 出演:新井毬子、岩瀬海、志村翔太、城間雄一、宮林妃奈子、矢野憩啓
    参加方法:会場参加のみ(後日、音声でのアーカイブを配信)
    申込み:Peatixより要事前申込、参加無料(https://bug240925talk.peatix.com/
     
    ■公開最終審査
    日時:2024年10月8日(火)15:00〜19:30
    審査員:
  • 内海潤也(石橋財団アーティゾン美術館学芸員)
  • 菊地敦己(アートディレクター、グラフィックデザイナー)
  • たかくらかずき(アーティスト)
  • 中川千恵子(十和田市現代美術館キュレーター)
  • 横山由季子(東京国立近代美術館研究員)
    参加方法:オンライン配信のみ
    申込み:Peatixより要事前申込、参加無料(https://final-1008.peatix.com

 

■ファイナリスト
新井 毬子/Mariko ARAI


1993年東京都生まれ、在住。東京藝術大学大学院美術研究科修了。ぬいぐるみや人形のような装置を用いて、現代の人間における根源的な行為や欲求を探るようなインスタレーション作品を、既存の社会構造、または民俗などを題材に表現している。


「Scapegoat」
従来のコンペティションでは扱いづらいテーマを今回は設定しているので、驚きつつも有り難く思っています。この機会を最大限に活かして、今の自分ができること、考えていること、伝えたいことをより多くの人々に見て頂けるように制作に取り組んでいきます。 


岩瀬 海/Umi IWASE


1998年三重県生まれ。秋田県在住。2023年秋田公立美術大学大学院複合芸術研究科修了。蟹座。姉が4人と妹が1人。ジェンダーやセクシュアリティを主なテーマに彫刻作品を制作。社会から周縁化された人々と、それらへの暴力について考えています。


 「SRSシリーズ」
小さな畑を始めました。秋田から東京へ「水やりをしなくちゃ」と、思いながら向かっています。
タネから育てた植物はまだ小さく、水分が足りないとすぐに枯れてしまう。近所の友人に水やりを任せて数日、家を離れて展覧会に参加します。この展示が始まる頃にはたくさん収穫できているといいな。


志村 翔太/Shota SHIMURA


1993年生まれ。神奈川県川崎市出身。実家は自営業のクリーニング屋だった。世界旅行、事業開発を経てIAMAS(情報科学芸術大学院大学)博士前期課程に在籍。松尾芭蕉が『奥の細道』の結びの地とした岐阜県大垣市への引越しをきっかけに「モビル文学」シリーズの作品制作を開始。芭蕉の意志を継ぎ世界中の街での発表を志す。


 「モビル文学 東京ボーイズアンドガールズ」
深い絶望に縛られた孤独な夜も、強い諦念に魅入られた光のない朝も「書くこと」だけは辞めずに続けてきた。これは使命で、運命で、天命で、十年前も一昨日も昨日も今日もそうだ。だから明日も明後日も死ぬ刻もそうだ。現在の志村翔太のマスターピースとなる作品を創り、強烈に魂を擦り付けた旅の栞としよう。観に来てくれる全ての人にLOVE!


城間 雄一/Yuichi SHIROMA


1998年埼玉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画第一研究室在籍。主に茨城県を拠点に活動。


 「ある座」
今回は展覧会に参加できるということですごく感謝しています。大きな絵を今回展示させていただくのですが、大きな絵はそのサイズ上展示する空間も難しくこのような機会をもらい展示ができ人に見ていただけることがとても嬉しいです。ご一緒させてもらう他の方々の作品も楽しみです。 色々な方に見ていただけると幸いです。


宮林 妃奈子/Hinako MIYABAYASHI


1997年北海道出身、東京都在住。2021年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業。2023年ベルリン芸術大学美術学部卒業、Thilo Heinzmannよりマイスターシューラー取得。現在、東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻在籍。「描くこと」「描かされること」の関係について、主にペインティング、ドローイング、コラージュ、リトグラフ等、素材や場との対話を重ねることを大切に制作しています。
 「あいだの手」
物質が空間になる時。薄い綿布や粗い麻、顔料や油などの物質が、私の手を通して、仕草や表情をともなった広がりとして現れます。絵の持つ可能性を探っていきたいです。


矢野 憩啓/Yasutaka YANO


2000年生まれ、千葉出身。2023年多摩美術大学 美術学部 絵画学科 油画専攻を卒業後、就職。現在千葉で活動中。主に自身の付属する属性や身体、自身の出会った物を絵画に起こし、それらに関わる言語を単語帳というテキストフォーマットにて制作。またそれらを展示する空間を自身で制作し、展示が作品の完成として構成し発表している。


「see-through」
働きながら制作を続けることは私にとっては不可能に近く、今回の公募に挑戦してる際、絵画はほとんど描けていません。また、本来であれば非常に曖昧で不確定な自身の作家像、作品の指し示す地点というものを、仮であるにしろ公募に向けて確定していかなければいけない作業は非常に大変でした。しかしながら最終的にグループ展に参加できることはうれしく思います。いい作品にしたいですし、いい展示にしたいです。

 
【関連リンク】
https://bug.art/exhibition/bug-art-award-2/

展覧会概要

会期 2024年9月25日(水)~10月20日(日)
会場名 BUG

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する