三森いこ写真集『この星の中』が刊行された。刊行に併せ、2024年7月16日から28日まで東京四谷のトーテムポールフォトギャラリーで写真展も開催された。
数年前、初めての社会人生活に馴染めず、毎日忙殺されている中、偶然にも出会った一人の男の子。彼を撮り続けながら写真家は自分とずっと向き合っていた。約1年3ヶ月の間、お互いの生活圏や見知らぬ土地、様々な場所へと向かいながら、三森いこが彼を夢中で撮り続けたシリーズ作品となる。
だれかと心で繋がりたい、ひとと深く繋がりたい。
私にとって写真を撮るということは、日々の生活の中では満たされない欲求をすこしでも満たすために必要な行為だった。
はじめてきみを見たとき、いいなと思った。
かわいくてちいさくて、ひたすら懐くきみが猫みたいで、ねこちゃんって呼んでいた。
シャッターを切るたびに、愛おしくて、かなしかった。
うれしいとかたのしいとか、そういうのが全部おなじだったらいいね。
ねこちゃんはいつしか私の背を越して、少年に変化していった。
きみは少しずつ、私の手の中には収まらなくなっていく。
撮ることは私の中にある冷たさを知ることだった。
きみの機嫌が悪くても泣いていてもカメラを向け続けるということは暴力的で残酷だと思った。
私もくるしかったんだよ。
けど、私は写真がないときみと繋がれないから、どうすることもできなかった。
いつからか、私は写真の中のきみが好きということに気づいて徐々に撮れなくなっていった。
近づいたり離れたりする心は、どうなるんだろう。
私はただ、きみのこと、大事にしたかった。
- 三森いこ『この星の中』
- 発行:私家版
- 編集:池谷修一
ブックデザイン:伊野耕一
プリンティングディレクション:鈴木利行
仕様:オールカラー、160ページ- 価格:4,400円(税込)
【関連リンク】
https://ikomimori.stores.jp/items/66aa1a09b3910e0273746876
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