橋本貴雄「交信」©Takao Hashimoto
東京目黒の金柑画廊で橋本貴雄「交信」が開催される。
橋本貴雄は、ドイツから日本へと拠点を変え、2023年から新潟・十日町の限界集落に移住し、古民家で暮らしながら作品制作を続けている。ある日、その古民家で古い家族の写真を見つけ、自身と彼を取り巻く環境、そして以前そこに暮らしていた人々とが時間の中で混ざり合うような感覚を覚えた。自身の有り様を見つめながら、写真を通して日常を切り取り、時の流れや動植物による自然の受容と重ね合わせてきた。
本展「交信」では、その家族写真のスライド上映と自身の写真作品を言葉で繋ぎながら、写真を介した場所や時間の再構築を試みる。また、7月13日から開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」の一環として、BankART妻有にて同タイトルでの展覧会が開催される。
『交信』
十日町の山間部にある集落桐山、ここではかつて70世帯あまりの人々が暮らしていたが、現在は私の家を含めて3世帯のみが暮らしている。私はこの集落の古い家を借りて住み、耕作放棄地を耕し、米と野菜を育てながら、自分の家や近隣の風景を写真で撮ってきて、現在一年が過ぎた。自然に覆われていく景色のなかで、ここから人がいなくなっても植物や動物はなんの関係もないように淡々と生きていくんだろうと、そんなことを思っていた。誰も住まなくなった家は放っておけば冬の豪雪に押し潰され、やがて草木に覆われて、そこにあった人の生活の気配もなくなっていく。ここに住みはじめてしばらく経って、屋根裏の片付けをしているとき、かつてこの家に暮らしていた古い家族写真が大量に置かれているのを見つけた。長い年月、見られることのなかったであろう写真のなかの時間は今でも生々しく写真のなかにあるようで、それからは私の生活のなかでもその時間はまだここにあるように思えて、私はその時間を覗きこむように写真を撮りはじめた。
家族の写真を見るなかで、何十年分もの時間がばらばらに重なっていき、その全体から一人の女性のイメージが浮かんできて、そのひとの見聞きしたもの、感じたことを想像し、彼女の語りとして家族の写真に言葉を添えた。言葉のなかには私がこの場所で見てきた現在の光景が交ざりあっている。なぜ人は過去との繋がりを求めるのか、時間の確かさと掴めなさ、そのなかに立つ私たちの揺れ、そんなことをずっと考えている。
2024年7月 橋本貴雄
■展覧会情報
橋本貴雄「交信」
会期:2024年7月20日(土)~8月12日(月)
時間:12:00〜19:00
休廊日:月曜日、火曜日、水曜日
会場:金柑画廊
住所: 東京都目黒区目黒4-26-7
■関連展示
BankART妻有2024 「創造的修復と交信」
会期:2024年7月13日(土)〜11月10日(日)
定休日:祝日を除く火曜日、水曜日
橋本貴雄「創造的修復と交信」©Takao Hashimoto
橋本貴雄「創造的修復と交信」©Takao Hashimoto
https://www.echigo-tsumari.jp/art/artwork/bankart_tsumari_2024/
【関連リンク】
https://kinkangallery.com/exhibition_kind/current_exhibition/
出展者 | 橋本貴雄 |
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会期 | 2024年7月20日(土)~8月12日(月) |
会場名 | 金柑画廊 |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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