top 本と展示写真集紹介太田克則『城』

太田克則『城』

2024/09/18
髙橋義隆

太田克則『城』が濱美写真村より刊行された。

 

かつて日本には数万もの城が存在したと言われています。
 
現代においては本来の軍事拠点としての存在意義を失い「時代の残像」となった城も、かつて現役であった時代には各地の豪族や武将達の存亡を賭けた戦いを通じて幾多の生と死が交錯した「魂の舞台」でした。城を歩くと石垣の影から不意に姿を現しそうな、当時を生きた武者達の気配を感じる瞬間があります。
 
一方、建造物としての城は安土桃山時代の始まりを境にそれまで山中に築かれた土の城(戦いの砦)から丘陵・平野に築かれた白亜の天守と石垣の城(見せる城)に大きく変貌を遂げ、築城技術の急速な進歩と相まって城郭建築としての独自の様式美が確立されてゆきます。
 
武者返しと呼ばれる優美な石垣の反り、狭間(さま)と呼ばれる塀や壁に穿たれた丸や三角、四角の銃眼の放列、屋根にしつらえられた大海原の波頭のような千鳥破風など、当時の職人達の魂によって形作られた美の数々は現代を生きる我々の心をも打つ魅力にあふれています。
 
写真集を編むにあたり、時代の残像である城に時代を越えて息づく武者や職人の魂の息づかいを表現しようと試みた結果、すでに過去(=死)となった城をモノクロで、城に宿る魂の木々の緑(=生)で表現する形にたどり着きました。
 
本書を通じて我々の遙かな世代を遡った先には命と覇権を賭けた戦いの時代があったことを、そして数多の無名の職人達によって天女のような美をまとった大規模建造物の数々が生み出された時代があったことに思いを馳せていただけますと幸いです。
(本書あとがきより)
 

 

■プロフィール
太田克則(おおた・かつのり)
1962年神奈川県生まれ。公益財団法人日本城郭協会会員。

2022年4月、日本100名城制覇。
訪問城数:245城(2024年3月15日時点)

 

  • 『城』
    著者:太田克則
    発行日:2024年7月13日(初版)
  • 発行所:濱美写真村
  • 監修:村上仁一
    アドバイザー:コムロミホ
  • ページ数:112ページ
    印刷・製本:有限会社ミノワ印刷

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