top 本と展示展覧会ピックアップ東京麻布のPGIでイライジャ・ゴーウィン作品展「The Last Firefly」が開催

東京麻布のPGIでイライジャ・ゴーウィン作品展「The Last Firefly」が開催

2024/06/01

Fiona on Porch with Firefly, Danville, VA ©Elijah Gowin

 

東京麻布のPGIでイライジャ・ゴーウィン作品展「The Last Firefly」が開催される。
 
「The Last Firefly」は、イライジャ・ゴーウィンのPGIでの2回目の個展となる。イライジャ・ゴーウィンは、1994年から写真家としてのキャリアを歩み始めた。牧師の祖父と写真家の父を持ち、母の実家であるバージニア州の古い農家に育ったゴーウィンは、幼年期に培った感性で、信仰や儀式、風景、記憶をモチーフに、自らの原点を探り出す術を写真に見出す。
 
モノクロームの情感豊かなデビュー作「Hymnal of Dreams」(1994年)を発表後、サイアノタイプやフォトグラム、ピグメントプリントなど、それぞれのシリーズに適した手法を選びながら、世界の複雑さに向き合い、写真で表現している。大学で教鞭をとりながら、2008年には自らの出版社、Tin Roof Pressを設立。写真集やジンを出版するだけでなく、図書館と独立系の出版社をつなげ、サポートを行うなど、精力的な活動を展開している。
 
近年は、幼年期の物語から今という時代に目を向け、環境や社会の変化、それらがもたらす問題提起に関心を寄せており、例えば、射的ゲームと若者のポートレイトによる「Shooting Star, Inc.」では、気候変動が常態化した世界で起こる暴力的な文化戦争、学校での銃乱射事件による若者の不安を見つめ、希望がいかにして生き残ることができるのかを問うている。
 
本作「The Last Firefly」は、ゴーウィンの娘たちが捕まえてきた蛍の光で気まぐれに作ったフォトグラムがきっかけとなっている。最初の一年はいくつかのフォトグラムを制作、抽象的な蛍の軌跡は、「最初は抽象的だったが、次第にメッセージを発する暗号のような形が浮かび上がってきた。(中略)ほとんどは漆黒の宇宙に浮かぶ星のようになり、無限に大きかった。」と語っている。
 
その後、さまざまな調査を経て、蛍の個体数減少に影響を与えている生態系や風景の変化を学び、アメリカだけでなく、アジアまで足を伸ばして撮影した。そうした中で、経済的な変化がもたらす風景の変化を目の当たりにする。「自然とテクノロジー、そして私たちが同時に生きるこの世界が、複雑な相関関係の上位にあることを表現したいと考えている」と語り、社会的なランドスケープと蛍という二つの風景によって作品が構成された。
 
本展ではアーカイバルピグメントプリント約32点を展示予定。

 

世界中のホタルの個体数減少に影響を与えている生態系や風景の変化について学ぶにつれ、私はそれぞれの個別な環境で撮影するためには、場所によって違うアプローチが必要だと知った。潮の満ち引きのある川沿いのマングローブの木にホタルが集まるマレーシアでは、真っ暗闇の中でボートに乗って近づくことができる。季節や月の周期、ホタルの短い命のサイクルに合わせて旅をすることで、ホタルのささやかな光を失わないように、月明かりのない夜に撮影した。ボートのエンジンが止まり、暗闇の中から柔らかな水の音や音楽のような小さな話し声が聞こえてくる瞬間は、なにものにも変え難い。
 
タイでは、老眼の私をときどき娘のフィオナが助けてくれた。若く鋭い目を持つフィオナは、夜の木々の中で儚いホタルの光を見つけては私のカメラを導いてくれたのだ。数日後、巨大なショッピングモールの光に引き寄せられる人々で溢れた街の喧騒の中で、道に迷い行き先を見失うという、似たような、しかし同時に対照的な難しさに直面した。自然とテクノロジー、そして私たちが同時に生きるこの世界が、複雑な相関関係の上にあることを表現したいと考えている。
イライジャ・ゴーウィン

 

■展覧会情報
イライジャ・ゴーウィン作品展「The Last Firefly」
会期:2024年6月5日(水)~7月20日(土)
時間:11:00〜18:00
休廊日:日曜日、祝日、展示のない土曜日
会場:PGI
住所:東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F

 

■イライジャ・ゴーウィン × オサム・ジェームス・中川トークイベント

両氏の写真集「A SHARED ELEGY」のテーマである “家族”や、今撮影をしている”風景”についてトークセッションを行う。

日時:2024年6月8日(土)16:00〜
会場:PGI
定員:15名
参加費:1,100 円(税込)
申し込み方法:店頭、Eメール、またはSqaure(下記QRコード)より。定員に達し次第受付終了。

※電話での申し込みは受け付けていない。

 

■プロフィール
イライジャ・ゴーウィン(Elijah Gowin)
オハイオ州デイトンに生まれる。1996年にニュー・メキシコ大学美術学修士課程終了。現在ミズーリ大学カンザスシティ校メディア・アート・デザイン学科の教授兼学科長として写真研究を指導している。
主な作品に、幼い頃の体験や思い出、夢の中の出来事をモノクロームで物語風に写した「Hymnal of Dreams」(2001年)、「Maggie」(2009年)、「Of Falling and Floating」(2011年)がある。2008年に出版社Tin Roof Pressを設立。受賞歴にグッゲンハイム奨励金(2008年)、パフィン財団助成金(2007年)、シャーロット・ストリート財団助成金(2006年)。主な作品収蔵先に、ロサンゼルス・カウンティ美術館(ロサンゼルス)、センター・フォー・クリエイティブ・フォトグラフィー(アリゾナ)などがある。
 

【関連リンク】
https://www.pgi.ac/exhibitions/9812

展覧会概要

出展者 イライジャ・ゴーウィン
会期 2024年6月5日(水)~7月20日(土)
会場名 PGI

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する