薄井一議『THE END OF ADVERTISING PHOTOGRAPHY』が刊行された。
薄井は自身の作品とクライアントによるいわゆる広告写真も多く手掛けている。本作はそんなクライアントワークを中心にして編集した内容となっている。ページを開くとその仕事量の幅と多さ、そして各案件のコンセプトをベースにしてイメージを創出していることに改めて気付かされる。この仕事を完遂させているのは、確かな技術とそれを具体化させるイマジネーションである。この一冊で薄井の非凡さが如実に伝わってくる。
巻末に管付雅伸によるテキストが収録されている。ここに記載された薄井の発言に彼が写真を撮るにあたっての姿勢がよく表れている発言を引用して締めくくりたい。
「僕は、人間が故のほつれやヒューマンエラーが面白いと思うんです。近い将来、そこにクリエイティブの重要性が置かれる気もします。偶然とか思っていない力が撮影の現場には生まれるし、それが写真の面白さ。撮影にはハプニング性、イベント性がある。広告写真の撮影でも偶然は絶対にあって、そこを美味しくいただくのが大事。僕にとって、広告写真も作品なんだけど、でもアート作品だと思っちゃダメだと(笑)。広告写真は芸術ではない。でも芸術を目指さなければいけない。その両義性やもがきが面白い。」
■プロフィール
薄井一議(うすい・かずよし)
1975年東京生まれ。1998年東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。主な個展に「マカロニキリシタン」(1996年コニカミノルタプラザ)、「Showa88/昭和88年」(2011年禅フォトギャラリー、2013年写大ギャラリー)、「Showa92」(2015年禅フォトギャラリー)、「Showa88-95」(2018年KKAG)、「Showa96」(2019年禅フォトギャラリー)がある。1997年にサンマリノインターナショナルフォトミーティング、2003年に東京都写真美術館で開催された「20代写真家の挑戦 IN&OUT」展、2016年にgalleri BALDER(オスロ)で開催された「A Vision of Japan」展など国内外のグループ展にも積極的に参加している。主な出版物に『マカロニキリシタン』(2006年美術出版社)、『Showa88/昭和88年』(2011年禅フォトギャラリー)、『Showa92』(2015年禅フォトギャラリー)、『Showa96』(2019年禅フォトギャラリー)、などがある。また2015年には映画「ダライ・ラマ14世」を企画・撮影した。清里フォトミュージアム (山梨)、東京工芸大学(東京)、株式会社アマナ(東京)に作品が収蔵されている。
- 薄井一議『The end of advertising photography』
- 発行:Magic Hour Edition
- 発行年:2024年
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