世界中の猫好きを魅了した『ハットリくん』出版から5年。待望の2冊目となる『ハットリくんへ』が出版された。
写真家・森康志にも2人の子供たちが生まれて家族が増え、日々の暮らしを撮影してきた。中心にはいつも猫のハットリくんがいた。今回の写真集はハットリくんと子供たちの愛の物語となる。
わたしと猫のハットリくんが出会って10年が経った。
見た目にはそれほど変わりはないが、戯れてもすぐに疲れて寝てしまう姿には、ハットリくんの老いを感じてしまう。
ハットリくんの生まれ故郷である福島県双葉町は、今もなお原発事故の影響で立ち入ることはできない。
じっと窓の向こうを見つめる後ろ姿に、何か行き場のない気持ちを感じてしまうことがある。
ハットリくんは今日も外を眺め、瞳には窓に流れる景色が映っている。
夕日を映す青い瞳は寂しげで、美しく、そして何より愛しい。
わたしには、そんな愛しさを写真にすることしかできないが、
無垢な感情を子供たちは爆発させて、ハットリくんを抱きしめる真っ直ぐな姿に、わたしの行く宛のない感情はほんの少しだけ和らいだ。
わたしたちは、言葉を交わすことはできない。しかし、だからこそできる心の空白の様な部分に、
わたしの感情を往来させ、時には血を分けたはずの子供よりも鮮明に、ハットリくんの姿に自分自身を感じることがある。
思いがけない展開の人生は儚く、短い。
あっという間に流れては消えてしまう、喜びや寂しさ、溢れる感情。わたしは瞳に映り流されしまう愛しさを、写し続けたい。
― 森康志
森 康志『ハットリくんへ』
発行:Libro Arte
デザイン:Bureau Kayser
仕様:140×220mm、128ページ、ソフトカバー+リベット止め
価格:4,400円(税込)
【関連リンク】
https://libroarte.stores.jp/items/65879d15dfae5d003561c2fc
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