top 本と展示写真集紹介森康志『ハットリくんへ』

森康志『ハットリくんへ』

2024/06/08
髙橋義隆

世界中の猫好きを魅了した『ハットリくん』出版から5年。待望の2冊目となる『ハットリくんへ』が出版された。
 
写真家・森康志にも2人の子供たちが生まれて家族が増え、日々の暮らしを撮影してきた。中心にはいつも猫のハットリくんがいた。今回の写真集はハットリくんと子供たちの愛の物語となる。

 

わたしと猫のハットリくんが出会って10年が経った。
見た目にはそれほど変わりはないが、戯れてもすぐに疲れて寝てしまう姿には、ハットリくんの老いを感じてしまう。
ハットリくんの生まれ故郷である福島県双葉町は、今もなお原発事故の影響で立ち入ることはできない。
じっと窓の向こうを見つめる後ろ姿に、何か行き場のない気持ちを感じてしまうことがある。
ハットリくんは今日も外を眺め、瞳には窓に流れる景色が映っている。
夕日を映す青い瞳は寂しげで、美しく、そして何より愛しい。
わたしには、そんな愛しさを写真にすることしかできないが、
無垢な感情を子供たちは爆発させて、ハットリくんを抱きしめる真っ直ぐな姿に、わたしの行く宛のない感情はほんの少しだけ和らいだ。
わたしたちは、言葉を交わすことはできない。しかし、だからこそできる心の空白の様な部分に、
わたしの感情を往来させ、時には血を分けたはずの子供よりも鮮明に、ハットリくんの姿に自分自身を感じることがある。
思いがけない展開の人生は儚く、短い。
あっという間に流れては消えてしまう、喜びや寂しさ、溢れる感情。わたしは瞳に映り流されしまう愛しさを、写し続けたい。
 
― 森康志

 

森 康志『ハットリくんへ』

発行:Libro Arte

デザイン:Bureau Kayser

仕様:140×220mm、128ページ、ソフトカバー+リベット止め 

価格:4,400円(税込) 

 

 【関連リンク】
https://libroarte.stores.jp/items/65879d15dfae5d003561c2fc

関連記事

PCT Members

PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。

特典1「Photo & Culture, Tokyo」最新の更新情報や、ニュースなどをお届けメールマガジンのお届け
特典2書籍、写真グッズなど会員限定の読者プレゼントを実施会員限定プレゼント
今後もさらに充実したサービスを拡充予定! PCT Membersに登録する