市川信也『2O14 [ni-ou-ichi-yon]』が刊行された。
市川信也は1959年京都市生まれの精神科医・写真家。
本作は、市川が愛読する村上春樹のベストセラー小説『1Q84』にインスピレーションを受け制作した作品だ。ある日夜の公園で犬の散歩をしている時に見つけた「水銀灯に照らされた、滑り台、シーソー、ブランコがあるだけ」の情景が、小説のシーンを彷彿とさせ、現実と非現実の境界が失われたような感覚に陥ったと言う。
市川はその感覚を写真で表現すべく撮影を始めた。4×5inchの大判カメラで夜の公園の遊具を懐中電灯で照らしながら長時間露光したものと、中判カメラに赤外線フィルムを入れ昼間の公園を撮影したものの、2つのシリーズから本書は構成されている。
暗闇に浮かび上がる滑り台やブランコ、動物を模した乗り物などの遊具は、昼間の見慣れたものとは異なる様相でシュールなオブジェとして浮かび上がってくる。
現実世界をメタモルフォーゼする表現媒体である写真と、村上春樹の無意識部へ深く潜り込むようなパラレルワールドの世界とが美しく溶け合った作品となっている。また、並行世界を体現するような、宮添浩司による装丁にも注目したい。
■プロフィール
市川信也(いちかわ・しんや)1959年京都市生まれ。小学校高学年の頃、蒸気機関車を近畿各地に撮りに行く。中学時代に初めて暗室を経験。高校時代は美術部に所属し、大学時代は写真部に所属。就職先では写真部を立ち上げる。1997年パリ第5大学第3期課程に留学、表現研究センターに属し、最初の個展を1999年に同センター付属のミュージアムで行い帰国。
帰国後は京都写真クラブに属し、毎年1~2回のグループ展に参加。理事としてもクラブ運営に携わり、2023年4月からは代表に就任。日本の他、フランス、中国、韓国でも個展を十数回開催、ギリシア、イギリス、米国、フランスなど世界各地の写真祭や写真展にも参加、多数の国際的な賞を受賞し、その作品はフランス国立図書館などに収蔵されている。
- 市川信也『2O14 [ni-ou-ichi-yon]』
- 発行所:ふげん社
- 発行日:2024年2月22日
- 寄稿:飯沢耕太郎
- デザイン:宮添浩司
- 仕様:216×276mm、2冊組、スリーブケース付き
- 定価:3,300円(税込)
【関連リンク】
https://fugensha-shop.stores.jp/items/65c84f2ae6849811603033b7
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