何気ない日常のなかにある偶然の交なりから生じる奇跡的な“瞬間”をとらえる写真家・オカダキサラ。
「街が見逃した奇跡の現場」と称しストリートを撮影し続ける作者による本作は、オールカラー200ページ、全100点を収録。2024年4月12日から4月29日までビニールテープ(京都府京都市)で開催される個展「FROM THE NEWORLD」では、本作の掲載作品を中心とした展示も予定している。
技術も機材もどうってことない。華々しくもなければ、猟奇的でもない。だから「だれでも撮れる」と勘違いされたりもする。
でも、彼女の首にはいつも、どんなときでもカメラがぶら下がっている。
携帯をポケットから取り出し、ロックを解除して写真のアプリを起動させる、そのあいだに逃げ去っていく瞬間を、首から下げたカメラならシャッターを押すだけで捉えられる。その、わずか数秒間の決定的な差。
撮るべきときに、撮るべき場所にいるために、どれだけ走り続けてきたのだろう。その走行距離が「日常がねじれる一瞬を見つけるちから」につながることを、多くのひとは理解しない。
「撮れる」と「撮る」のあいだに横たわる深い溝。日々、目の前を通り過ぎる無数のシャッターチャンス。その「チャンス」を「シャッター」に結びつけるには、感覚をシャッターにのせた指先に直結させるトレーニングが必要だし、それができてこそ開けてくる視界というものを、僕らはいま、ここで目撃する。
―都築響一
■前書きなど
世界は美しい……ですが、優しくはありません。
解決しがたい問題は次から次へと生まれますし、終わりが見えない仕事は常に山積み。煩わしい人間関係はどこにでもありますし、悩みの種は尽きません。
同時に、世界には出会いの感動が溢れているのも事実です。まるで仕掛けられていたかのように偶然が重なる一瞬や、なぜ?と問いかけたくなる「ちょっと楽しい」
不思議な場面がどこかに必ずあります。
そんなシーンを写真に残してずらりと並べてみたらどうなるだろう? 日常には「ちょっと楽しい」がたくさんあるんだ、と思ってもらえるんじゃない?
それが私が街の写真を撮り続ける理由です。この作品集をご覧になった人が、ご自身の回りで「ちょっと楽しい」を探したくなってくれたら嬉しいです。
きっと毎日見慣れていた景色が、「新世界」になるはずです。
―オカダキサラ
■プロフィール
オカダキサラ (オカダ キサラ)
1988年東京生まれ。2006年に武蔵野美術大学を卒業。在学時の課題をきっかけにストリートフォトを撮り始め、「1_WALL」「Juna21」「コニカミノルタフォトプレミオ」などに入選。2023年キャノン「GRAPHGATE」優秀賞受賞。ウェブサイト「fashionsnap.com」「NeWORLD」、都築響一氏発行のメールマガジン「ROADSIDERS’ weekly」で写真コラムを連載。
- オカダキサラ『新世界より』
- 発行:KENELE BOOKS
- 刊行日:2023年12月19日
編集:五十嵐健司
デザイン:孝学直- 仕様:B5変型、200頁
定価:3,600円(税別)
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