東京麻布のPGIでジョシュア・チュアン「Boats, Books, Birds」が開催される。
写真キュレーターであるチュアンは、2007年、イェール大学アートギャラリーにて同校初の写真キュレーターに就任し、ロバート・アダムスの巡回回顧展「The Place We Live」を企画。以来アダムスとの関係を深め、20冊近い出版物に携わってきた。
写真家であるロバート・アダムスは、作品制作の傍ら、ボートや本、鳥の木彫作品を作り続けてきた。何十年もの間、アダムスと彼の妻が自宅の壁や棚に飾って、ときどき移動させながら一緒に暮らしていたという愛らしい木彫の数々。本展では、2017年からアダムスの誘いにより、それらを撮影したチュアンの写真作品を展示する。
それは2017年、ロバート・アダムスが長年にわたって作ってきた木製のオブジェを記録するために、アメリカを横断し、彼の住んでいるアストリアまで飛んでくるよう私を誘ったことから始まった。2006年に彼と知り合って以来、何度もこの家を訪れ、家のあちこちでそのオブジェを目にしてきたし、彼の作品をキュレーションした回顧展にもいくつかの作品が含まれていた。というのも、彼は自分のアーカイブを整理している最中で、その多くをイェール大学に寄贈する予定だったからだ。単に記録するだけでなく、何十年もの間、彼と彼の妻が自宅の壁や棚にそのオブジェを飾って、ときどき移動させながら一緒に暮らしてきたこの場所で、写真に撮って欲しいと願ったのだ。
私は夏と秋の2回、彼の家へ行った。印象的だったのは、ボブがまだガレージの作業台で何かを作っていたことだ。彼にとっては、写真制作と対をなすものとして、また単なるドキュメンタリーではなく、世界の愛すべきものとの関わり方として、重要なことだったのだろう。私はそれを写真で表現しようとしたのだが、私は決してプロフェッショナルな写真家ではない。
大学では写真を専攻し、ニューヨークの歴史博物館で個展を開いたこともある。しかし、そのころには、アーティストになるという野望と引き換えに、クリエイティブで知的なエネルギーをキュレーションやアーティストとのコラボレーションに注ぐチャンスを手にしていた。
写真を撮ることを止めてはいなかったが、すでに写真家ではなかった私は、数年振りにクリエイティブな仕事を引き受けることになった。
ボブも私も、スタンドに沢山のライトや反射板を載せて、彼のささやかな居住スペースを占領するような大がかりな写真撮影をしようとは考えていなかった。
そこで、私は最も目立たない機材、小型デジタルカメラ、三脚、手持ちのレフ板を持って行き、また、彼の妻が書道用品を買っている地元の画材店に行き、背景に使う薄いグレーの紙を買った。
それはとてもプロの仕事とはいえなかった。カタログ用の写真を撮るために、私たち二人を雇う人はいないだろう。家にあるものを使って、即興で撮影をしながら、どうすれば良いかを考えていった。三脚の脚を写真集の束で支えているボブの写真が面白い。
しかし、これらの写真には、私たち二人に語りかけてくるような、素朴さがある。
ジョシュア・チュアン
■プロフィール
ジョシュア・チュアン Joshua Chuang
1976年ニューヨーク生まれ。2007年、イェール大学アートギャラリーにて初の写真キュレーターに就任し、ロバート・アダムスの巡回回顧展「The Place We Live」を企画、 同校におけるリー・フリードランダーのアーカイブに尽力した。2014年、アリゾナ州ツーソンにあるセンター・フォー・クリエイティブ・フォトグラフィーのチーフ・キュレーターに任命され、2016年にはニューヨーク公共図書館のアート部門を率いることになり、アナ・アトキンス、タリン・サイモンの展覧会を企画。川田喜久治の『地図』(マック、2021年)のマケットのファクシミリ版をMACKと共同出版した。2006年以降、ロバート・アダムスと『Boats, Books, Birds』など20冊近い出版物でコラボレーションしている。
■展覧会情報
ジョシュア・チュアン「Boats, Books, Birds」
会期:2024年2月28日(水)~4月8日(月)
時間:11:00〜18:00
休廊日:日曜日、祝日
会場:PGI
住所:東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F
【関連リンク】
https://www.pgi.ac/exhibitions/9624
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