『観察 SURVEILLANCE』(2018年、禅フォトギャラリー)に続く山縣勉の最新作である『私の小さな宇宙』は、コロナ禍で外出が規制された期間に、以前からときおり夢に現れる光景をモチーフにして、過去の自身の作品や収集した古本等をコラージュして再現を試みた作品集である。
「2020年からのパンデミックの中、私は自分の部屋に引きこもった。過去に撮影した写真や収集した古い本、雑誌、新聞などに囲まれ、鬱々として長い時間を過ごした。
大量の記録を眺めるうちに睡魔に襲われ、幼少期からたびたび夢に出現する奇妙な光景と錯綜し始める。皺が刻まれた肉の塊や人体の一部がゆっくりと変形しながら私に迫り、時には真っ暗な巨大な空間に一人取り残される。また足が極端に長い動物が遠くに現れたかと思うと、密集し増殖する人の顔や粒に体が沈んでいく。
うなされるでもなく、わずかな恐怖と焦りを感じるそれらの夢が、一体何を意味するかはわからない。きっと私の中に潜み、私自身を生み出し動かしている宇宙なのだろう。
私は部屋に散らばった紙片をひたすら眺め、ハサミで切りとり、糊で貼りつけ、夢の再現を試みた。その作業は私の不安を落ち着かせ、心を外界に向かわせてくれた。」
― 山縣勉
■プロフィール
山縣 勉(やまがた・つとむ)
1966年東京生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科卒。主な個展に「国士無双」(2012年、禅フォトギャラリー)、「Thirteen Orphans」(2013年、Colorado Photographic Arts Center/コロラド)、「涅槃の谷」(2016年、禅フォトギャラリー・2017年、gallery176/大阪)、主な出版物に『Bulgarian Rose』(私家版、2011年)、『国士無双』(2012年、禅フォトギャラリー)、『涅槃の谷』(2016年、禅フォトギャラリー)、新装版『国士無双』(2017年、Case Publishing & 禅フォトギャラリー)、『観察SURVEILLANCE』(2018年、Case Publishing & 禅フォトギャラリー)などがある。2018年にはAthens Photo Festival “Pale Red Dot” に参加するなど国際的に活動している。作品はニューメキシコ大学美術館、ディーアール・バウ・ダジ・ラッド・ミュージアム(ムンバイ)に収蔵されている。
- 山縣 勉『私の小さな宇宙』
発行:ZEN FOTO- 発行年:2023年
- 仕様:257×370mm、66頁、掲載作品36点、ソフトカバー
言語:英語、日本語
エディション:300部- 価格:5,500円(税込)
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