1939年、橋本照嵩は宮城県石巻市に生まれた。つまり標題は出身地である。1963年日本大学芸術学部写真学科を卒業し、写真家として活動し、北井一夫、平地勲らとのら社に参加。1974年に写真集『瞽女』出版(のら社刊)にて日本写真協会新人賞を受賞する。
2011年3月11日に起きた東日本大震災によって故郷である石巻は甚大な被害を受け、発生直後から3年にわたり日常を取り戻そうとするふるさとの人々の姿を撮影し、2014年に『石巻 2011.3.27-2014.5.29』(春風社刊)として上梓した。
本作『石巻 1955.6-1969.5』は、橋本照嵩が初めてカメラを手にして間もない10代の頃から30歳ごろまでの間に撮影したものである。橋本のキャリアにおいて最初期の作品と言える。半世紀以上前の活気あふれる石巻の町と人々の様子が描写され、貴重な記録となっている。
敗戦から10年が経過して、人々はようやく平穏な日常を過ごせるようになった時代である。町に集う人の表情や様子をみると、生きる喜びに満ちているように感じる。経済が成長していく過程は日本の一地域でも実感が伴っていたようだ。
1990年初頭にバブル経済が崩壊し、2011年の大震災に以降、日本はあるゆる面で下降線を辿っている。たぶん、このまま日本という国はシステムそのものが瓦解し、滅亡するであろう。中央と地方の格差は2024年1月1月におきた能登半島地震によっても、それは顕著だ。
『石巻』を古き良き時代の日本がある、と書けばあまりにも表層的すぎる。なぜ当時の人々の表情が生き生きとしていたのか? 現在のありようと比較し、考えたとき、やはりは日本は滅亡するしかないと思う。人心ともに荒廃した日本でこの写真集を見たとき、かつて希望に満ちた表情の人がいたことに気付くであろう。
- 橋本照崇『石巻』
- 発行:ZEN FOTO
- 発行年:2023年
- 仕様:257×182mm、72頁、掲載作品54点、ソフトカバー
言語:英語、日本語
エディション:700部
価格:2,970円(税込)
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。