2016年、梁丞佑(ヤン・スンウー)は『新宿迷子』にて外国人として初めて土門拳賞を受賞以降に知名度を広め、より精力的に写真を撮っており、様々な作品を発表している。とくにZen Foto Galleryから何冊か写真集を発表しており、本作『荷物』も同様にZEN FOTOからの発行である。
梁は街中に佇むホームレスの人々が大事そうに抱えている荷物を目にしたとき、その中に彼らそれぞれの人生が詰まっているのではないかと想像し、彼らに声をかけポートレートを撮影するプロジェクトを開始した。60人以上を撮影したものからまとめたのが本作である。
梁は路上で生活する彼らが荷物を大事そうに抱えている姿を見て、「きっと人生が詰まっているんだろう」と思い、興味を持った。だが実際に覗いてみると「そうでもなかった。」と感じたという。
写真にある人物と彼らが抱える荷物の中身を見たとき、実に千差万別である。だがその中身が彼らの人となりを現しているようで、それが個性となり、アイデンティティーとなっているようにも思える。また梁は彼らから話しを聞き、現在に至るまでの経緯を語らせ、被写体の輪郭をより明瞭化している。
カメラは6×6を使用している。35mmのスナップを得意としている梁だが、ここでは中判カメラで被写体と対峙している。6×6カメラで撮影するその姿勢は、まっすぐに対象と向き合い、その描写力も35mmカメラよりもシャープに、より鮮明に写すことになる。彼らに対する梁の心情がカメラにも反映されているようだ。
梁丞佑の写真を見るたびに、写真にしか為しえないことがあると感じさせられると同時に、敬意を覚える。本作を見てその思いをより強くした。
- 梁丞佑『荷物』
- 発行:ZEN FOTO
- 発行年:2023年
- 仕様:255×182mm、80頁、掲載作品81点、ソフトカバー
- 言語:英語、日本語
- 価格:4,290円(税込)
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