top 本と展示写真集紹介『即興 ホンマタカシ』

『即興 ホンマタカシ』

2024/01/22
髙橋義隆

ホンマタカシは1999年に写真集『東京郊外』(光琳社出版)で第24回木村伊兵衛写真賞を受賞した。行政やデベロッパーによる画一的な開発が進む東京郊外の風景と人々を一定の距離感で撮影し、叙情性を排した視点が高い評価を受けた。
 
2011年から2012年にかけて、国内3ヵ所の美術館を巡回した大規模個展「ニュー・ドキュメンタリー」を開催。キャリア初期に手がけたイギリスのカルチャー誌『i-D』をはじめとするマガジン・ワークや、変わりゆく東京の風景とそこに暮らす一人の少女が成長する姿を写した〈Tokyo and my Daughter〉、写真家の中平卓馬をモチーフにした映像作品など、作家の写真・映像表現の広がりを概観する新旧作品が展示された。
 
本書は東京都写真美術館で2023年10月から2024年1月まで行われている「即興 ホンマタカシ」展の図録である。ホンマにとって日本の美術館で開かれる約10年ぶりの個展となる。ホンマは建築物の一室をピンホールカメラに仕立て、世界各地の都市を撮影した、本展の中核をなす出品作品〈THE NARCISSISTIC CITY〉について、「都市によって都市を撮影する」と述べている。外に向かって開かれた小さな穴から差し込む光は、真っ暗な部屋の中に倒立した都市の風景を即興的に描き出している。
 
そして、この「即興」という言葉が展示では一つのキーワードとなる。作品や展覧会自体に偶然性を取り入れることに作家の現在の関心はあり、作品の中にも文字として現れる本展の英題「Revolution 9」は、イギリスのロックバンド、ビートルズが様々な音源を元にコラージュのように制作した、同名曲へのオマージュとして捧げられている。
 
図録では展示での様子を撮影した写真も含まれており、開催されてから制作されたようだ。薄く紙質で造本され、編集自体にも即興性が意図されているように思える。
 
本作はこの10年あまりに制作された作品を中心に、写真・映像表現にラディカルな問いを投げかけるホンマの現在が凝縮されている。

 

  • 『即興 ホンマタカシ』
  • 価格:3,960円(税込)
  • 発行年:2023年
  • 発行元:東京都写真美術館
    判型:A5
    仕様:256頁

 
【引用】
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4540.html

 

【関連リンク】

https://www.nadiff-online.com/?pid=177167412

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