タイトルである『距離と深さ』は、竹之内祐幸が写真を撮る上で考え続けているテーマだという。
壁の穴や開けたドア、ガラス戸などの向こうにいる動物や植物、指にとまる蝶や掌に載せられたヤモリ、焦点が外れてぼやけた人物、何かをみている人の後ろ姿。日常や旅の断片的な記憶が緩やかにつながってゆく。シャープなイメージ、ブレた、そしてざらついたイメージが並び、常に変化する被写体との距離感、そして記憶との距離感も感じさせる。
都市の風景、花や草木などの自然、身の回りの何気ない日常、親しい友人などを被写体とし、暗黙裡に共有されているルールに隠された物事の奥に潜む本質を露わにしようとしてきた竹之内は、孤独との対峙や社会との距離の認識といった、見落とされがちな個人が身につけている身振りを作品において浮かび上がらせることで、多様性、同一性とは何かを問いかける。
本作は、友人からポートレイトを撮ってほしいと依頼されたことがきっかけとなっているという。遠く離れた場所に行ってしまう恋人に送りたいからと撮影を頼まれた竹之内は、さまざまな場所で撮った風景から、小さな小石のようなほんの些細なものまでをひとつの世界に感じられるようなアルバムが作れたらと考え、本作を制作した。
差し込まれた黄色・紫の紙にはプリントが手貼りされ、ページは閉じられておらず開いたりめくったりするたびに少しずつずれてゆくという、作品テーマにも繋がるような極めて繊細な作りになっている。
- 竹之内祐幸『距離と深さ』
- A4変型・66ページ・掲載作品57点
デジタルプリント8点貼付け
デザイン・編集:藤田裕美 @fjt.tokyo
出版:FUJITA
作家サイン入り- 価格:6,490円
【関連リンク】
https://www.pgi.ac/store/index.php?main_page=product_info&products_id=2541
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