©Yuichi Higashionna
大阪のThe Third Gallery Aya「東恩納裕一展」を開催する。2019年に開催した二人展「重なりと作用」以来、個展としては初めてとなる。
日常なありふれたもの、特に、戦後日本のどこの家庭にもあった「ファンシー」なインテリアをモチーフに絵画やオブジェを制作。それら「ファンシー」なものは、西欧へのねじれた憧れが生み出したオリジナル不在の「不気味なもの」と言えるかもしれない。代表作の日本独特の丸型の蛍光灯が多数絡むシャンデリアは白く過剰な光を発し、全てを暴いてしまうような激しい存在感を湛えている。
今回もさまざまなメディウムが盛り込まれたインスタレーションとなり、2Fと4Fの2フロアを使った初の試みとなる。
東恩納裕一を紹介する
1980年代から90年代にかけて国際的デビューを果たした日本人アーティストとは異なり、東恩納裕一は、象徴的な決まり切ったイメージ −ヒノマル、ヒロヒト、ヒロシマ(PC日本人の3H)−を一切使わない点が新鮮であった。彼はむしろ日本社会の見えない、目立たない形相に目を向けた。戦後日本の中流階級は、自分たちがヨーロッパのスタイルを輸入したと思い込んでいた、しかし、「ファンシー・グッズ」というキャッチーな名前で呼ばれた、建売り住宅の出窓のレースのカーテン、プラスティックの造花、パステルカラーの生活用品などは、ヨーロッパ式でもファンシーでもなく、日本にしか存在しない。つまり、「ファンシー」はオリジナルのコピーではなく、オリジナル不在のシミュラークルに他ならない。「ファンシー・グッズ」こそ、日本における現実の見えざる構造を映し出していた。[…]
明からさまに政治的なアートとは実際の政治を単純化したものである。リアルな政治とは、目に見えない細かな権力関係のネットワークを通して機能し、そのネットワークが順調に機能していることを誰も意識していない時が、政治的には理想の状態ということだ。[…] 本質的に政治的なアートとは、市民権を得ているが自覚されることのない政治を扱い、隠されているものを露わにする。東恩納は、日本社会の暗黙の政治に焦点を当て、親近感があってなおかつ違和感のある(=「不気味」な)シミュラークルの正体を暴き、その日々の機能に介入してきたのである。
[…]
近年の東恩納の関心は、日本的なテーマからより普遍的なものへと移り、和製シミュラークルという狭い範囲を越えて、視覚的な効果の文化的な役割を深く探求している。この新たなステージにおいて、暗黙の政治性が従来とは異なる革新的なオプ・アートを見出しているのである。[…] 一見自然だと思える環境は、何らかの政治性や制度を潜ませているものとして見なされる。あるひとつの性質(例えば白さ)を過剰化することで、そこに潜むものを顕在化させる。東恩納がホワイトキューブに足を踏み入れるのは、そこにひずみを生じさせるためである。この誇張化、介入とひずみが、新たなオプ・アートを構成する。そこでは不気味なものと芸術的な美とがユーモラスなバランスを保っているのである。
清水 穣「白と黒の揺らぎ:東恩納裕一の『ライト・ワークス』」
(『FL gasbook 26』2012年)より抜粋)
■展覧会情報
「東恩納裕一展」
会期:2023年11月25日(土)~12月23日(土)
時間:12:00〜19:00(土曜日は17:00まで、火曜日はアポイントメントオンリー)
休廊日:日曜、月曜
会場:The Third Gallery Aya
住所:大阪市西区江戸堀1-8-24. 若狭ビル2F+4F
■対談イベント
清水 穣(美術評論家、同志社大学教授)×東恩納裕一
日時:2023年12月9日(土)18:00〜19:30
参加費:1,000円
会場:The Third Gallery Aya(10名)+YouTube配信
■プロフィール
東恩納 裕一(ひがしおんな・ゆういち)
1951年東京生まれ。多摩美術大学絵画学科油画卒業。東京都在住
【関連リンク】
https://thethirdgalleryaya.com/exhibitions/higashionnna2023/
出展者 | 東恩納裕一 |
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会期 | 2023年11月25日(土)~12月23日(土) |
会場名 | The Third Gallery Aya |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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