石川真生の『私に何ができるか』は2023年10月から12月24日まで東京オペラシティ アートギャラリーで開催している同名展示の図録である。
近年発表している「大琉球写真絵巻」を筆頭に、1970年代に撮影された沖縄の夜の街で生きる女性たちを中心にした「赤花 アカバナー 沖縄の女たち」、そのとき出会った黒人兵の故郷を訪ねる「Life in Philly」、「港町エレジー」「沖縄芝居」、そして「大琉球写真絵巻」の前哨ともいえる「日の丸を視る目」など、現在の至るまでの活動を網羅した内容となっている。
とくに「大琉球写真絵巻」にほとんどあてられていることに、写真家の姿勢と意志が感じられる。沖縄の歴史を戯画的に振り返り、芝居がかった演出でもって作る一方で、スナップ的に撮影したドキュメントもあるが、背景にあるのは沖縄という土地が抱えている現在を示している、ということであろう。
初期の作品から一貫しているのは、レンズの先に常に人がいるということだ。それは石川が変わらずに抱いている姿勢である。人を信頼している一方で、絶望もある。だが徒労感を覚えようと信じる気持ちを忘れずにいることで、為政者に対し抵抗し続けることが写真を撮る原動力になっているようだ。
大規模な展示でありながらレトロスペクティブにならず、近作の「大琉球写真絵巻」で大半を占めていることに石川真生の現在がある。沖縄で撮り続けることはウチナンチューだけの問題でなく、ソトナンチューの問題でもある。その問い掛けに『私』は向き合わざるを得ない。
- 石川真生『私に何ができるか』
- 発行:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
- 発行年:2023年
- 仕様:432ページ、ソフトカバー、300×112 mm
- 価格:3,520円(税込)
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