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東京・東神田のKanzan Gallery でAnne Pöhlmann「Dresden Diary」(企画:小池浩央)が開催

2023/11/17

Anne Pöhlmann「Dresden Diary」©︎ Anne Pöhlmann

 

東京・東神田のKanzan Gallery で、Anne Pöhlmann「Dresden Diary」(企画:小池浩央)が開催される。

 

1978年に旧東ドイツのドレスデンで生まれたアンネ・ペールマンは、いわゆるポスト・ドイツ再統一の世代に属しており、それ以前の世代の代わりに世界中を旅し、知見を深めることを求められていました。高校卒業と同時にドレスデンを離れた彼女は、まずライン川沿いの街マインツ、そしてフランスへの留学を経たのち、デュッセルドルフ芸術アカデミーでトーマス・ルフのもと写真を学びました。それ以来デュッセルドルフとハバナでアーティストとしてのキャリアを築いてきたペールマンですが、いつか長期に渡って故郷の街を見てみたいという思いをつねに抱いていました。
 
シュテファン・ツヴァイクは20世紀初頭のドイツにおける文化状況について「ベルリンはまだ芸術・文化の面で主導権を握っていなかった・・・・・・ドレスデンのオペラは音楽界を支配していた」と述べています(『昨日の世界』1942年)。イタリアと繋がるバロック様式の美と伝統を持つドレスデンは、文化的に非常に洗練された都市でした。しかし第二次世界大戦終盤に連合国軍による無差別爆撃が行われてこの街の85%が破壊され、戦後にはソ連占領地域に建国されたドイツ民主共和国に組み込まれます。
 
ドイツが再統一を果たしてから20有余年、この街が再び注目を集めることになるきっかけが、2014年10月にドレスデンで設立された市民グループ「ヨーロッパのイスラム化に反対する愛国的ヨーロッパ人(ペギーダ)」でした。2015年にドイツで難民申請を行った人の数は、およそ80万人にまで上り、ドイツ政府の難民受け容れ政策に対するアンチテーゼとして生まれたこのようなグループは他の都市でも現れましたが、圧倒的に成功したのが25,000人に上るデモを組織したドレスデンの「ペギーダ」でした。
 
この出来事について考える中で、ペールマンは2016年のPhotoweekend Düsseldorfで1984/85年にドレスデンに住んでいた写真家の古屋誠一と偶然出会い、それぞれにとっての昔の「故郷」について語り合いました。古屋は2015年にKunsthaus Dresdenで「Was Wir sehen. Dresden 1984/1985」、Technische Sammlungen Dresdenで「GRAVITATION」という2つの展覧会を同時に開催しましたが、その際に古屋はペギーダのデモを目撃し、その様子を撮影したものを1984/85年当時の写真とともに『Why Dresden』(Spector Books、2017年)という写真集にまとめました。
 
2022年にドレスデン写真奨学金を得たペールマンはこの街に85日間滞在しました。その間にiPhoneで撮影された数百枚の写真からなるこの写真日記は、まずインスタグラムに投稿され、後にリサイクルポリエステルでできた羽二重の生地にプリントされ、本のページのように対になる形で2022年11月に古屋と同じTechnische Sammlungen Dresdenで展示されました。こういったことから「Dresden Diary」は単なる写真日記ではなく、『Why Dresden』に対する彼女からの回答とも言えるでしょう。故郷を離れてから四半世紀後、街が辿った歴史の痕跡と彼女自身の記憶を探りつつ、彼女の知らない日常が刻まれた見慣れた場所をあくまで個人的なアプローチで捉えていきます。

 

■プロフィール
Anne Pöhlmann(アンネ・ペールマン)
1978年ドイツ・ドレスデン生まれ、デュッセルドルフ/ハバナ在住。ヴィジュアル・アーティスト/写真家/アートディレクター。アーティストグループlonelyfingers共同創設者。デュッセルドルフ芸術アカデミーで写真と彫刻を学ぶ(トーマス・ルフとリタ・マクブライドに師事)。
主な個展に、「Comforters」(Clages Gallery、ケルン、2022年)、「Dresden Diary – Ein Tagebuch」(Technische Sammlungen Dresden、2022年)、「Japanraum」(Langen Foundation、ノイス、2019年)など。
主な受賞に、ヴィラ鴨川奨学金(2017年)、デュッセルドルフ市ビジュアルアート賞(2014年)、ペーター・メルテス奨学金(Bonner Kunstverein、2013年)など。
 
小池浩央(こいけ・ひろひさ)
武蔵野美術大学大学院映像研究科修了後、フランス・ナント美術大学にてアーティスト・リサーチャー、エストニア芸術大学にて講師。現在はエストニア・タリン大学大学院博士課程在籍中。専門は写真論・フランス現代思想。研究テーマは、ジャック・デリダの概念的遺産に基づく写真における遅延・喪・贈与についての考察。主な論文に「Lein ja fotograafia: Jacques Derrida fototeooria」(Etüüde nüüdiskultuurist; 9, 2021)、「The noeme of photography: the paradigmatic shift in the photographic theory of Roland Barthes」(Kunstiteaduslikke Uurimusi / Studies on art and architecture, 28 (3-4), 7-26., 2019)。
 
■展示情報
Anne Pöhlmann「Dresden Diary」
会期:2023年11月16日(木)~12月12日(火)
時間:火〜土曜12:00〜19:30、日曜12:00〜17:00 
休廊日:月曜日
会場:Kanzan Gallery
住所:101-0031 東京都千代田区東神田1-3-4 KTビル2F
 
【関連リンク】
http://www.kanzan-g.jp/anne_pöhlmann.html

展覧会概要

出展者 Anne Pöhlmann
会期 2023年11月16日(木)~12月12日(火)
会場名 Kanzan gallery

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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