本作は2023年4月15日(土)〜8月6日(日)にかけて、THE NORTH FACE STANDARD二子玉川とTHE NORTH FACE STANDARD 広島を巡回して開催した展示にあわせて刊行された作品集である。
2019年の草野の展示「(s s )vision」を元に菅野を招いて再構成し、THE NORTH FACE STANDARD 京都で開催され、2021年のKG+で「Double Focus」として実現した。
「(s s )vision」は、草野にとって写真とは一瞬を切り取る装置であり、同時にその一瞬は連続する時間の中にあるものでもあるという考えのもと始まっているという。これまでの作品世界の解釈をさらに深化させ、新作を交えて作られたのが本作となる。
撮影地は福島県である。この地は草野にとっては故郷であり、菅野にとっては父の故郷で、震災をきっかけに継続的に撮影を続けている場所である。『Double Focus』は、同じ被写体を異なる体験から描くことに興味を感じ、生まれたという経緯がある。
それぞれが写真を撮り続け、対話を繰り返し、違った視点からもう一度写真を見返す中で、変化していった写真の意味や価値を発見し、1冊に結実した。
2011年以降、福島という言葉は日本で生きる者にとって、その意味が大きく変化し、いまもその渦中にある。報道で見聞きする福島とは異なる福島が本書で展開されている。同時にここにある福島もまた事実であり、二人の写真にとっては真実の福島なのかもしれない。『Double Focus』の写真を見ながら、日々という時間の流れについて思いを馳せた。
- 菅野恒平&草野庸子『Double Focus』
- 発行:私家版(2023年)
- 寄稿:村越としや
- デザイン:沼田創
判型:183×135mm、ソフトカバー、150部- 価格:3,500円(税込)
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