最近、金村修の出版物が続いている。ZINEの形式のものが多く、印刷発注の容易さも考えられるが、同時に早く手軽に作品集を作れる姿勢に、現在の金村修のポジションを示しているように思える。レコードで例えるならLPではなく、EPとでもいおうか。アルバム形式ではなく、すぐさま撮って発表するというような感覚とでもいおうか。本書に掲載された写真が撮り下ろしかなのかわからないが、簡易さと完成を求めない現在進行形のような印象がある。
本作の仕様で特徴的なところは、写真の一部を大きくトリミングしているページが随所にある点だ。それもプリントの一部を大きくするのではなく、印刷されたイメージを切り取って拡大している。そのため印刷物をルーペで覗いたときに見える網点が確認できる。オフセット印刷の場合、細かい点が集まってイメージが再現される。銀塩プリントも粒状で構成されているし、画像データもdpiの数値によってイメージの輪郭が作られる。人間が目にするイメージの多くが点(ドット)の集積によって成り立っていることになる。
以前、金村の書籍を紹介したときにも書いたが、金村修の写真行為の根底に〈もの〉へのこだわりがあるように感じる。写真は〈もの〉である。物質の塊によって再現されたイメージにしか過ぎないと。本書の網点を見ていると、自分は写真を見ておらず、印刷物を見ているだけじゃないかと、思えてくる。骨董的な価値を付けられた写真集やオリジナルプリントを重宝する向きもあるが、所詮、どんな支持体で作られようが、これは〈もの〉ですよ、と言われているような気がしてならない。そして私たちは〈もの〉の惑わされているのかもしれない。
- 金村修『Media2.0』
- 出版社:INDIGO CO., LTD.
- プロデュース:二手舎
- 発行年:2023年
アートディレクション:豊田名帆- 判型:H274×W184mm、17works、ミシン綴じ、別紙和訳テキスト付、300部限定
翻訳:Bonnie Pong-Wai Ma
印刷:藤原印刷
製本:望月製本所- 価格:3,960円(税込)
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