ニック・ヘイムズ「THE LAST SURVIVOR IS THE FIRST SUSPECT」
©Nick Haymes
photographers’ galleryで企画展としてニック・ヘイムズ写真展「The Last Survivor is the First Suspect」を開催する。
ロサンゼルスを拠点とする写真家、ニック・ヘイムズが2005年から2009年にかけて撮影した本作は、南カリフォルニアとオクラホマ州タルサを中心に放浪する若い友人たちのコミュニティの記録だ。そこでは、友情や絆の芽生えを記録する喜びとともに、やがて訪れるであろう一連の悲劇につながる恐れの感触とがないまぜになって物語られている。
撮影から時を隔てた2021年、写真集『The Last Survivor is the First Suspect』としてKodoji Pressから刊行された本作は、若い友人たちへの祝福、そして鎮魂歌でもある。
写真集では、親密な写真の中を縫うようにして、ヘイムズがのちに手がかりとしたスクリーンショットが織り込まれており、もうひとつの物語へと見る者を引き込む。撮影が行われたのはソーシャルメディアの普及が始まって間もない頃だったが、彼はそれぞれの友人たちのグループ間にコミュニケーションの新しい接点があることを鋭く感じとった。
MySpaceやYouTube、オンライン掲示板などのプラットフォームは、人とのつながりを可能にすることで連帯感を生み出すと同時に、新たな応えようのない基準や期待をもたらした。丹念に拾い集められた登場人物たちの間で交わされる、そうしたさまざまなコミュニケーションのかたちが、不吉な予感をより際立たせている。写真集の中には実在するジオタグやURLのリファレンスが散りばめられており、本書が開く主観的な真実へと見る者を誘なう。
ヘイムズは10代の頃に生じた極度の人見知りを、カメラによって補うことができたと語っている。「カメラを手に取って身を潜めれば、関わらずとも、再び人々のそばにいて、彼らと親密になれることに気がついた。」写真集の制作に際し、ヘイムズはこの写真群に立ち戻り、写した人々に何が起こったのかを自身のためにつなぎ合わせていきた。そして、この特定の出来事との現在ならではの関わり方を模索し、物事は異なっているようでいてどこか同じでもあることを示唆している。イギリス人作家L・P・ハートリー(L. P. Hartley)は青春小説『恋を覗く少年(The Go-Between)』の冒頭に、「過去は異国である。そこでは人々の生き方がまるで違う。」という名文を残している。本作は、この感覚をきわめて明快に表していると言えるだろう。
- ■展覧会情報
ニック・ヘイムズ写真展「THE LAST SURVIVOR IS THE FIRST SUSPECT」
会期:2023年10月17日(火)~10月29日(日)
時間:12:00〜20:00
休廊日:会期中無休
会場:photographers’ gallery
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿2-16-11-401 サンフタミビル4F
■同時開催
北島敬三写真展「PORTRAITS-M」
【関連リンク】
https://pg-web.net/exhibition/nick-haymes2023/
出展者 | ニック・ヘイムズ |
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会期 | 2023年10月17日(火)~10月29日(日) |
会場名 | photographers’gallery |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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