山下豊『439 ROUTE3』は同名展示にあわせて作られた冊子である。
国道439号線は、別名「酷道ヨサク」と呼ばれ、徳島県徳島市から四国の中央部を横断して高知県四万十市まで347kmの道のりがある。別名の「酷道」という字が元々あるのか、あるいは造語なのか、いずれにせよこの字面を見ると、その道の険しさが想像される。
山下によると「実態は一部の他国道との重複区間や改良区間を除く大部分の区間が、対面通行不可能な隘路(あいろ)区間が多い」という。作者はこの道に偶然知り、テレビ番組で取り上げられているを見て、「私ならこの道で何に出会い、何を知ることができるか確かめたくなって、気づけば旅の計画を立てていた」という。
作者は自動車を運転しながら、途中下車して撮影を繰り返したようだ。対向車に気を遣いながら走行していたようで、かなり道幅の狭いところであるらしい。
高知県というと土佐湾に面した海側を発想するが、地図を見ると国道439号線はちょうど四国の中程を横断している。陸地としてそれなりの高さもあり、地図上からでもある種の険しさを想像させる。
だが山下が撮る写真はそんなことを思わせず、実に淡々とした印象を与える。ここに写る人たちもどこか素朴な感じを見る者に与える。そして自然には険しさと同時に、穏やかさを湛えたものもある。いち個人のドキュメンタリーとして、貴重な視点のありかたを提示している作品となっている。
【関連リンク】
https://176.photos/exhibitions/230922/
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