top 本と展示写真集紹介上田晃司『U.S ROUTE 66』

上田晃司『U.S ROUTE 66』

2023/09/16

髙橋義隆

アメリカの国道66号線は、かつてイリノイ州シカゴとカリフォルニア州サンタモニカを結ぶ3,755kmにおよぶ横断道路であった。州間高速道路の発達により1985年に廃線となった。

北米大陸の横断道路はそれだけでひとつのカルチャーといえる。例えばジャック・ケルアック代表作『路上』は、アメリカの大地と道路がなければ誕生することはなかった。文学において道が背景となり、ドラマとなった。スタインベックの『怒りの葡萄』ではルート66はマザーロードと呼ばれ、この道の別名として定着した。

映画においてはデニス・ホッパーが監督、出演し、ピーター・フォンダが主演した『イージー・ライダー』があまりにも有名だ。ドラッグを手にしたヒッピーふたりが、ハーレーダビットソンにまたがって、ただ走るだけの内容だ。途中出会う人々とのエピソードが挟み込まれるが、それが映画のテーマに重きを置いていない。この映画においても主人公は道であり、ふたりのバイカーはただの案内役であった。ただ道を走るだけで映画として成立するのも、アメリカの大地が為せるのであろう。モンテ・ヘルマン監督の『断絶』もまた、同様にジェームズ・テイラーとデニス・ウィルソンがルート66を自動車で走るだけの内容だ。

上田晃司の『U.S ROUTE 66』はそんな、かつてのアメリカの名残りを残す国道66号線を記録した作品集だ。デジタルではなく、大判と中判カメラで撮影している。端正の記録された国道66号線は、かつてのロードムービーのような疾走感はないが、スチールゆえの冷静さが別の側面を提示しており、なぜかリラックスした気分に浸れる。