『Serquyosh(セルクヨシュ)』は廣田比呂子が2019年にウズベキスタンで撮りおろした作品を集めた写真集である。タイトルはウズベク語で「光がたくさん」という意味だそうだ。
ウズベキスタンは19世紀にロシア帝国に侵略され、1918年のロシア革命の影響を受け、ウズベク・ソヴィエト社会主義共和国だった過去がある。そしてソ連が崩壊すると共和国として独立、1991年に「ウズベキスタン共和国」と国名を変更し、現在に至る。かつてシルクロードの交易地として栄え、多くのイスラム建築はサマルカンドブルーと呼ばれ、空よりも青い街と称された。
2015年、廣田はこの地を訪れた。以来美しい街並みはもとより、好奇心いっぱいに声をかけてくれる人々のあたたかさや、誰もが「悪いことの次には必ず良いことが起きるから大丈夫」と信じて笑う屈託のないウズベキスタンの人々に惹かれていったという。
2016年の政権交代以降、経済や観光などが大きく変わり、街と村、歴史と現在といった背景を見据えながら、廣田はこの地で出会った人々の温かさや人柄に触れ、撮影を続けてきた。
ウズベキスタンにはかつて、第二次世界大戦後に日本人抑留者が建設に携わった劇場や建物があった。捕虜でありながら懸命に働く日本人の姿に感銘した現地の人は「日本人のようになりなさい」と、その姿を見本にしたという。廣田は自分が日本から来たと言うと、快く受け入れる彼らの感情の奧に、そうした歴史があることを知り、その建物を撮り、日本人が眠る墓地を撮影した。
日本と少なからず因縁のあるウズベキスタンの美しさが収められた珠玉の1冊である。
- 廣田比呂子『Serquyosh ─光あふれて─』
- 発行:赤々舎
- 発行日:2020年9月
- ブックデザイン:廣田順
- 仕様:196mm ×300mm、136ページ、ハードカバー
- 価格:3,500円(税別)
- http://www.akaaka.com/publishing/serquyosh.html
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