現在の写真表現において、横田大輔の存在を抜きして語ることはできないであろう。国内、国外でも高い評価を受け、新作が発表されるたびに次はどんな作品を展開しているのか、期待されている数少ない写真家である。
本作は2023年7月に開催された写真展にあわせて制作されたZINEである。1冊は作品集、他2冊はメイキングともいえるような構成の内容である。作品集はどういう素材でもって、どのような手法で制作したのかわからないが、抽象的なノイズともいえる表象が心地良い。
写真を徹底的に物質として捉え、写っているものに対して疑いの目を向け続けている。写真は写っているのが正しいのではない。これはただのモノです、といったとき、写真というメディアの根本を疑ってみる。猜疑の目で見つめ続ける先に何があるか、横田の作品はそうした問いにひとつの答えを投じているようだ。
そして、定点で撮影したもので構成されている2冊のメイキング風の冊子だが、制作風景、あるいは自分自身を見られる環境に置くことで、視線とは一方でなく相互の作用であり、見ることが同時に見られることに関係性にあることを暴露しているようだ。視線の脱構築ともいえる本作は、横田大輔の現在進行形が確認できる重要な作品となっている。
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