東京・東神田のkanzan galleryで川崎祐写真展「未成の周辺」が開催される。
川崎祐は、家庭内写真と地方・郊外をテーマに制作を続ける写真家だ。前作「光景」シリーズは、地方における家族の姿と、それを取り巻く地元の風景を「家族写真」「地方写真」等の既存の文脈から逸脱させ、新たな解釈のもとにその枠組み自体を批判的に捉えなおした作品だった。
「kanzan gallery」で開催する「未成の周辺」は前作からおよそ3年ぶりとなる川崎の新作となる。本展は2022年にAlt_Medium(東京)で発表したものから大幅に内容を充実させたうえで構成されている。なお、本展開催に合わせて同名の写真集を先行販売する。
和歌山県新宮市に取材した『未成の周辺』は、「聖地」として知られる熊野の風景の脱構築と、「風景写真」の成立条件を問う意欲的な作品だ。本作で川崎は、2つの方法から「風景」へのアプローチを行っている。
ひとつは、「聖地」としての熊野の虚飾性を排した、郊外的な地方の風景が連続するパート。風景の郊外化が進む今日の日本において、川崎が熊野において見出した「ありきたりな風景」は、いわば私たちの多くが囚われ、私たちに内在している「風景」の再提示であるとも言える。
もうひとつは、路面バスの車窓から熊野の風景を撮影した「風景写真」をまとめたパート。新宮から大和八木駅までのおよそ6時間半に及ぶ道中に撮影された写真は、端に窓枠が入ったり、揺れによってぶれたり、水面と窓枠が奇妙なグラデーションを構成していたりと収差が加わっている。それにより写真は、「風景写真」として一見失敗しているように見える一方、ある種の美しさを携えた「写真」として成立している。このパートにおいて川崎は、過剰なまでにカメラの機械性に身を委ねた撮影を繰り返すことで、「風景」あるいは「風景写真」の成立条件にアプローチしていると言える。
■関連イベント
ギャラリートーク「写真の風景をめぐって」
9月9日(土)16:00〜
倉石信乃(詩人)× 篠田優(写真家)×川崎祐(写真家)
定員30名/要予約
■写真集
『未成の周辺』
著者:川崎祐
発行:喫水線
頁数:156頁
言語:日本語
価格:7,000円+税
寄稿:倉石信乃(詩人)+著者
帯文:鈴木理策(写真家)
装丁:岡田和奈佳
■展覧会情報
川崎 祐 写真展「未成の周辺」
会期:2023年9月1日(金)~9月24日(日)
時間:火〜土曜12:00〜19:30、日曜12:00〜17:00
休廊日:月曜日
会場:kanzan gallery
住所:〒101-0031 東京都千代田区東神田1-3-4 KTビル2F
【関連リンク】
http://www.kanzan-g.jp/index.html
出展者 | 川崎祐 |
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会期 | 2023年9月1日(金)~9月24日(日) |
会場名 | Kanzan gallery |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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