〈キッチュ〉とはドイツ語で、〈俗悪なもの、まがいもの〉という意味であり、また〈本来の目的とは違う使い方をされるもの〉という意味もある(出典元は『大辞泉』)。『キッチュ a みゃあみゃあ』には、その両方の意味を含んだ写真で展開されている。
若子jetは広告写真で活躍する傍ら、自身の作品としてスナップで街にあるキッチュなものや光景を撮り集めている。本作は名古屋で撮影されたもので構成されているが、元々通っていた大学が名古屋であったため、気軽な姿勢で撮ったようだ。
目を惹くのは奇妙なオブジェやモノ、そしてこれらを彩る色彩である。街にはこれほど色彩があるのか、というぐらい色に溢れている。表紙を飾る犬なのかそれに似た別の生き物をモデルにしているのか、よくわからないオブジェも、過剰なまでに彩られ、本来の姿がすでに見えなくなっている。
奇妙なものを撮るのは、一見安易に見えるが、実は嗅ぎ取る才能が求められる。発見してもただ撮るだけではなく、どの位置で構図の収めるかで面白さが伝わるかどうか、わかれるところである。
正直なことを書くと、筆者は作者の作品を見るのは初めてだ。だがここに収められたキッチュとしか言いようのない街に溢れたものたちを見つけ、写真に昇華するそのセンスは、理屈ではない才能の持ち主であることは伝わってくる。
日本各地にあるキッチュな風景を、これからも撮る続けてくれるであろうと期待したい。
- ミニ写真集『キッチュa みゃあみゃあ尾張⭐︎なごや編』
- 発売日: 2023年7月14日(自費出版)
- 作者:若子jet
- 判型:24ページ・210×148×25mm
【関連リンク】
https://wakakojet.thebase.in/items/76068077
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