top 本と展示写真集紹介西野壮平『SHORT STOREIS: Beppu』

西野壮平『SHORT STOREIS: Beppu』

2023/08/23
髙橋義隆

西野壮平の代表作である『Diorama Map』は、大都市をテーマに鳥瞰、仰視、路上と可能な限りの視点から撮影して、これらの写真をキャンバスにつなぎあわせ、壮大なジオラマとして作品化している。このシリーズは評価され、現代の写真や美術に関心がある人であれば、西野の作品を知らない人はいないはずだ。
 
そんな西野の新刊はショートストーリーと銘打って、温泉地である別府を舞台にまとめている。タイトルを見たとき、違和感を覚えたのは、西野壮平といえば大都市という先入観があったからであろう。別府をストレートに撮っているのか、写真スタイルを変えたのか? と勝手に憶測し、ページを開くとそこには西野ワールドが展開している。
 
写真をつなぎ合わせる方法は同様だが、対象に対するアプローチがより身近な距離感となっている。都市の場合、その広大な空間を捉える場合、鳥瞰の範囲も広くなるが、ローカルな地域で絞れば、その視点と距離感は自ずと近づいてくる。その近い距離感が本作の魅力となっている。
 
別府であれば温泉である。エッセイでも「温泉に入る人々を写真に収めることを最初から決めていた」と書いている。西野自身も温泉に浸かる自分を撮影している。温泉以外にも猿や猫、ワニといった動物を撮影している。そのためか随所にユーモアが感じられ、写真家西野壮平の新たな面が表出されている。
 
むろん引いた視点で別府の町を撮影しているものもある。だが、それで小さい範囲なので微笑ましい感じがする。『SHORT STOREIS』は今後も続けていくようなので、日本や世界各地で新たな物語を紡いでほしいと思わせる作品だ。

 

西野壮平 写真集『SHORT STORIES: Beppu』

発行日:2023年6月
発行:Migo

デザイン:山根恵美

仕様:158×148mm・64ページ・ハードカバー

 
【関連リンク】
http://migo.jp/books/short-stories-beppu-sohei-nishino.html

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