『NEUTRAL COLORS』4(NEUTRAL COLORS刊)を手にしてページを捲りながら、雑誌の面白さを再認識し、雑誌がなくなりつつある時代において、わずかな可能性を見出したような気がした。
特集は「雑誌を仕事にすると決めた運河の畔」である。HPの紹介文を引用すると以下の通りである。
仕事とはなにか?働く意味は?個人的な問いをめぐる「仕事」特集。「雑誌を仕事として継続していけるか」を探りに、ベルリンのブックフェアとアムステルダムのパブリッシャーを訪ねる。ヨーロッパ及び世界流通へ、アムステルダムの取次に飛び込み営業。美濃和紙の工房に“臨時”で弟子入りし、オリジナル和紙を漉き込む。福島の故郷に戻り人生を模索する女性、空飛ぶ車を開発するテック企業、消えゆく文字の仕事「写植」を記憶し、落選中の政治家の仕事にフォーカスする。障害を持つ人が働くほんとうの意味、宮大工が思考する木と石の建築物。アリ植物を育てる世界で唯一の人に会い、シンガポールのインディペンデント出版に触発される。校正という仕事の裏側、写真家が養蜂に見る“脱成長”への道。仕事を通して人生を考える。
この文章を読むだけでも混沌とした感じがあるが、実物の本書は文字通り混沌としている。しかし、その混沌ぶりが面白い。仕事をテーマに様々な人を取材し、その内容に沿って紙質を変え、レイアウトも変則的である。一見するとまとまりがないように見えて、何度か捲っていくうちに、ひとつの整合性があるように思えてくるから不思議だ。
最後に印刷費に関する見積書が複写されている。リアルな金額がそのまま載っており、その赤裸々さが潔い。そして紙の塊のような本書のありように、この先雑誌が果たしうる理想の姿があるように感じた。
- 『NEUTRAL COLORS』4
- ページ数:272
仕様:257×182×16.5㎜
Bookmaking:Saddle Stitch
発行:2023
デザイナー:Daisuke Kano
編集:Naonori Katoh
出版:NEUTRAL COLORS- 価格:2,970円(税込)
【関連リンク】
https://neutral-colors.com/books_post/neutral-colors-4/
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