top 本と展示写真集紹介『Decades No.2 CONTEMPORAL JOURNAL 2021-22』

『Decades No.2 CONTEMPORAL JOURNAL 2021-22』

2023/06/10

『Decades』は写真とエッセイが融合した構成となっている。体裁としては雑誌に分類される。編集は岩根愛、河西香奈、姫野希美。誌面に写真、文章を寄せているのは菅野純+古川日出男、長島有里枝+柴崎友香、陳哲+蒋斐然、イ・ハヌル+シャロン・チョイ、ナリン・サオボラ+ジェシカ・リム、飯沼珠実+朝吹真理子、榮榮&映里+福永信、小原一真+ナターリャ、岩根愛+雨宮庸介、畠山直哉+大友良英の組み合わせとなる。
 
今号は2号であり、創刊号は2020年12月に発行されている。編集後記によると2020年夏に岩根愛が雑誌の創刊を思いついたという。つまりコロナ禍において緊急事態宣言下の時期にあたる。老舗のカメラ・写真雑誌の休刊が相次いだ時期にこうして新たな写真雑誌が誕生したことは、2020年頃の転換期だったと改めて感じる。
 
創刊号は先に見えない状況での制作、流通だったことに対し、2号は2021年から2022年を背景にして写真とテキストで構成されている。むろんコロナ禍が継続していると同時に、この間にロシアによるウクライナ侵攻という出来事が起きている。そして、2021年は東日本大震災、福島原発の惨事から10年となる。いずれもまだ継続した事案である。『Decades』にもこうした背景を主題にした写真、テキストがある。
 
また日本以外の国、韓国や中国、カンボジア、ウクライナの人々が参加している。写真はいわば世界の共通言語であると同時に、様々な国や地域、状況に置かれた人がいることを認識するのが当たり前ともいえる。それぞれの立場で発信する写真、言葉は多様性を含み、ときに読む側に気付きを与えてくれる。閉塞した環境だからこそ多視点の編集になったのかもしれない。
 
イメージとテキストがほどよく共存する『Decades』は、雑誌であることの理由が明確にある。紙媒体が消えつつある時代だからこそ、その存在意義は大きい。次の号も期待したい。

 

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