top 本と展示写真集紹介ときたま『エビス日記』

ときたま『エビス日記』

2023/06/08

『エビス日記』は作者であるときたまが2019年11月10日から2022年11月9日までの2年間、日記のように撮り続けた日々をまとめた1冊となっている。本書は写真の下に日記が掲載されるレイアウトになっている。4月1日から始まっているが、何年かは書いていない。写真とテキストは直接の関係をもっているものもあれば、ないものもある、という想像が浮かぶ。つまり、写真とテキストは共存関係にありそうでないのかもしれない。
 
東京の恵比寿に生まれ育ったというときたまは、渋谷区恵比寿が生活圏内となる。詳しいプロフィールは掲載されていないので、ときたま個人の背景はわからない。だが、本書の写真を見て、日記を読むと瑞々しい感性を持っている人だということは伝わってくる。撮影している時期はコロナ禍の真っ只中であるはずなのに、悲壮感や切迫感がない。これは人柄かもしれない。
 
撮影はすべてiPhoneのカメラだという。だが、印刷でも充分耐えうる画質である。そしてiPhoneのカメラはもれなく光を吸収しているようで、街を彩る色彩があふれている。むろん、撮影しているときたまが反応するものが、光と色に満ちているからであろう。カメラと撮影者の相性は抜群のようだ。
 
日記とは本来個人的なものであるはずだ。だが、文学の場合でも同じ作者の小説より日記の方が面白く、後世にも残っている例はある。永井荷風は自分の作品で唯一評価できるのは『断腸亭日乗』だというような主旨のことをどこかで述べていた記憶がある。『エビス日記』もまた永井荷風の精神性を受け継いでいる作品のような気がする。もし毎年刊行されれば、『断腸亭日乗』と比肩しうる日記になるかもしれない。

 

  • ときたま『エビス日記』
  • 出版社:有限会社トキヲ
  • 発行人:飯沢小百合
  • 発行日:2023年5月14日
  • 撮影日:2019年11月10日〜2022年11月9日
  • ブックデザイン:塚田佳奈
  • 印刷・製本:株式会社山田写真製版所
  • 価格:3,850(税込)
  • https://fugensha-shop.stores.jp/items/6472e97f8577a9002d29e005

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