阿部自身が運営に携わるVACUUM PRESSからの刊行となる本作は、これまでと同じ判型、造本、そしてストリートスナップである。一貫した作りに阿部淳の明確な姿勢が現れているようだ。
タイトルの他にある情報は「October,2014」とだけある。2014年11月に撮影されたという事実であろう。あとがきもないので、なぜイスタンブールへ行ったのか、滞在したのは何日かなど、補足情報はない。写真だけで充分という潔さもこれまで通りだ。
イスタンブールはトルコ北西部にあるの商工業都市である。かつてはコンスタンティン1世によってローマ帝国の首都になり、その後は東ローマ帝国、オスマン帝国の首都となった。アジアとヨーロッパを繋ぐ接点地域であり、ビザンチン文化遺跡やイスラム教寺院が残る地域は世界遺産に登録されている。
大きい都市はあたりまえだが多くの人が集い、賑わっている。阿部はそんなイスタンブールの街中を、これまで撮影してきた大阪や釜山、マニラと同様にスナップしている。地元の人にすればアジア人観光客がカメラを片手に記念撮影をしているように見えたかもしれない。しかし、阿部の視線はどこで撮ろうがぶれることなく、身体の欲求の趣くままに撮影しているように見える。
阿部はカメラを手にするとすべての思考と反射神経がそこに集中するようだ。写真的欲望と身体がこれほどまでに直結した写真家は他にいないのではないかと思わせるほど、本作でも阿部淳のスナップを堪能できる。
ちなみに随所に猫や犬が登場しているが、トルコは法律で野良猫や野良犬が手厚く保護している国で知られている。
- 阿部 淳『イスタンブール』
- 出版社:Vacuum Press
- 発行:ホビージャパン
発行:2023年5月11日
判型:モノクロ ・B5変型・500部・168ページ・写真164点
定価:3,300円(税別)- http://vacuumpress.wwww.jp/menu.html
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