赤外線とは『大辞泉』によると「太陽スペクトルの赤色部の外側にあって目に見えない光線。波長は約0.77ミクロンから1ミリ程度で、熱作用が大きく透過力も強いので、医療や赤外線写真などに利用する」とある。物理学あるいは光学に即した説明で掴み難いが、ざっくりいえば人間の視覚では認知できない光ということであろう。だが、デジタル技術の発達により、見えない世界を可視化できるのが現在だ。
澤村徹の『デジタル赤外線写真マスターブック』(ホビージャパン刊)は、そんな赤外線写真の作りかたを教えてくれる好著である。まず赤外線写真とは何かという説明からはじまり、撮影に適したカメラ、レンズ、フィルターを紹介。そして、Lightroom、PhotoshopといったAdobeのアプリケーションを使用してどのように編集するかもノウハウを公開している。
現在のカメラのほとんどがデジタルである。もしくはイメージ生成の99%がデジタル領域であると言っても過言ではない。スマホで撮影することは日常になり、最近ではAIによる画像作成技術の登場により、イメージはデジタル世界でますます生まれている。
それでも人が撮影し、手を加えることの面白さと醍醐味はまだ余地がある。AIも創造の領域へと侵食している印象だが、想像力の領域はまだ人間に及ばないであろう(と信じたい)。赤外線という見えない世界をデジタルカメラと周辺機器によって可視化してしまえるわけだから、そのイメージ世界をどう発展させていけるか、まだ挑戦できるのりしろはあるはずだ。
本書は昨今のデジタル社会におけるイメージ表現の幅を広げ、未知の領域の期待を高めてくれるそんな1冊である。
- 『デジタル赤外線写真マスターブック』
- 著者:澤村徹
- 発行:ホビージャパン
- 発行日:2023年3月31日
判型:A4判
定価:3,300円(税込)- http://hobbyjapan.co.jp/books/book/b621846.html
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