佐藤哲也の『スペイン ひと・まち・ひと』(新潮社図書編集室刊)は、タイトルが示す通りの内容だ。著者である佐藤哲也は1959年生まれ。20歳の頃大学を休学して2年間スペインに滞在し、この地で写真を撮り続けたという。日本に戻り、大学を卒業し、就職してからも時間を作ってはスペインに通い撮り続けた。
本書は1980年代以降に撮影された写真で編集されているが、デジタル以前であるからカラーフィルムで撮影されている。フィルムの質感である濃度の高い色味が印刷でも再現され、デジタルにはない色調が新鮮に感じられる。
著者はあとがきで「なぜスペインだったのか」と、初めて行く時の心情を振り返ったが、「アンダルシアの灼熱の大地はどんなところだろう」と漠然とした気持ちで飛行機に乗ったという。もしそれが本当であれば、直感的にスペインという場所を選んだともいえるが、こうして写真集となって見たとき、著者の直感は間違いではなかったと言える。
筆者はスペインに行ったことはないが、本書のページを捲っているうちに、光と影を通して土地の熱気やときに冷ややかな、それでいて乾いた空気感が肌に伝わってくるようだった。スペインの街はカラー写真が似合う。そう実感させる好著である。
- 『スペイン ひと・まち・ひと』
- 著者:佐藤哲也
- 定価:3,300円(税込)
- 発行:新潮社図書編集室
- 発売日:2022年11月30日
- https://www.shinchosha.co.jp/book/910239/
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。